BASARA

□幸村と佐助
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「佐助」



ずいぶんと、立派な格好だな



真田の旦那が開口一番に言ったのがそれだった。

任務帰りのくたびれた俺様は、今日に限って全身が朱に染まっていた。

力の入らないのをいいことに、旦那は俺様の腕を掴んだまま離さない。



「見せてみよ佐助」


「やだ、旦那、」



抵抗も虚しく、べろんと剥かれた装束から覗くのは真新しくも忌々しい傷。

この人にだけは、見られたくなかったのにな。



「…ほう、腹がいっそ清々しいほどに裂けておるわ」


「旦那、やめて、」



「ふ…、血濡れたお前なぞ、初めて見た」



しかもそれが自分の血なのだからどうしようもない。

真田の旦那は、ふ、と柔らかい表情を浮かべてそれから俺様の傷に舌を滑らせた。

ああ、頭がくらくらする。

血を流しすぎたのか、それとも旦那の行為の所為か。

きっと両方だ。



「ちょ、だんな、ほんと、」


「痛いか」


「…いたいと言うより、血が足りないです」


「それはいかんな。俺が手当てをしてやろう」


「え、旦那がですか」


「…馬鹿にしているのか佐助」


「いいええ、滅相も御座いません」



旦那の後ろに真っ黒い何かを見てしまった気がして即座に頭を下げる。

一応血止めはしてあるけど手当はきちんとしないと倒れそうだ。

真田の旦那に手当てなんかしてもらったことがないというか普通主がすることじゃないよねぇ。

どうしよう、今更断…れるわけがない。



おとなしく手当てを受けようと決める。

…決めたはいいが、旦那は一向にその場から動こうとはしない。

俺様…何かした?



「…佐助」


「はい?」


「俺はお前の血で血濡れたお前を二度とは見たくない」



旦那のまっすぐな力強い瞳が俺様の瞳に訴えてくる。

ああ、目を逸らせない。



「…だが、」



‐‐今だけは同じ色だ





口付けられる瞬間に目に入ったはちまきは、目に痛いくらい紅かった。







imprudente


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