BASARA
□元親と佐助
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「…まつげ長ぇ」
俺の膝の上で眠りについている派手な格好の忍を眺めながら、ぽつり、ひとりで呟く。
こんな無防備に寝ちまっていいのかよ忍ともあろうものが、と頭の中で言ってみたりする。
仮にも敵の前だぞ。
まあ、俺にはこいつをどうこうしようなんて気はさらさらねぇし、それを見越した上でこんな姿を晒してくれているなら話は別で…なんだか複雑な気分になっちまう。
もしかしたらこんなところで寝入っちまうほど疲れていたのかも、と思うとなんだか起こしてしまうのは忍びない。
そしてかれこれ半刻ほど、猿飛は俺の膝の上で丸くなっていた。
「軽ィなぁ、おまえ」
誰が聞いているわけでもないひとりごとは静寂の中に溶け込んでいった。
膝の上の忍は身じろぎひとつもしない。
爆睡か。爆睡の域なのか。
すると突如、ばさばさと聞き慣れた羽音がして頭上を鮮やかな色が舞い飛ぶ。
いつも肩に乗せている愛鳥だった。
俺と猿飛しかいない、しかもその猿飛は爆睡こいてるこの異様な部屋に鳥は入ってきて、俺の肩に留まることはせずにばっさばっさと空を飛び続けた。
「モトチカ、モトチカ」
目を覚まさないのをいいことに、眠り続ける猿飛のきれいな橙の髪を撫でていると頭上で虹色の南蛮の愛鳥が鳴く。
「…悪ぃな、今こいつが寝てんだ」
ちょっと静かにしてくれな
と、目で訴えると賢いのかはたまた偶然か、鳥は鳥のくせにこしょこしょと声を落として俺の耳元で囁くように言った。
「モトチカ、モトチカ、オタカラ、オタカラ」
「…はっは!お宝…ねぇ」
…なかなか面白いことを言う。
−そうだなぁ、俺にとっちゃこいつがお宝みてぇなもんか。
なんて、本人が聞いていたら真っ赤な顔をして突き飛ばされそうな台詞を言ってみた。
お宝…
鬼の宝、か
まだ夢の中をさまよう猿飛の寝顔。
「・・・・」
まじまじと見つめた半開きの無防備な唇が扇情的で、まるで海の渦潮に吸い込まれたように俺は猿飛の桜色に唇を寄せた。
やらけぇなぁ…と思っていたら、目覚めた猿飛に頭を思いっきりぶん殴られた。
顔赤いぜ。
かわいいやつ。
gioiello