BASARA
□小十郎と佐助
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もう日も落ちかける夕暮れ時。
ずっとしゃがみ込みっぱなしだった腰を上げて手についた泥を払う。
今日はこんなところでいいだろう。
毎日毎日、精魂込めて育ててきた色とりどりの野菜たちが先ほどまでいじくっていた土の中から顔をのぞかせている。
−お前らを収穫するのはもう少し先だな。
首にかけていた少し土で汚れた手拭いで額を拭う。
今日も野菜たちは元気なようで、このままいけば月の終わりにでも収穫でき
「毎日毎日、ご苦労さま」
「あぁ…………あ?」
…聞き慣れない声だ。
思わず返事を返してしまったが、この場−俺の畑−には俺以外に誰もいない。…はずだ。
額に当てた手拭いもそのままに辺りを見回す。
…誰もいない。
「(…空耳か?)」
だが空耳のそれにしてはやけにはっきりと聞こえていたように思う。
けれど、先程の声が空耳じゃないとすればなんだと言うんだ。
…まさか侵入者か。
いや、仮に侵入者だったとしても、わざわざ俺に労いの言葉をかけるだろうか。
「(…それはないな)」
とにかくもう日が落ちてしまう。
まだ不可解な声に胸の蟠りは残るがそろそろ城に帰らなくては。
「…ふぅ」
畑仕事をするのに欠かせない、いつも使っている道具をまとめて肩に担ぎあげると口から溜息が漏れた。
おいおい、俺ももう年か?
そう簡単に疲れるような身体の作りはしてないはずなんだがな。
「……戻るか」
肩の道具を担ぎなおして最後にもう一度落ちかけの夕日にあてられて色付いた野菜たちを一瞥。
城への道を歩き出した。