BASARA
□元親と佐助
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「猿飛」
くしゃりと頭を撫ぜてくる大きなてのひら。
大きくて、無骨そうなのに、この手は器用にも料理をしたり裁縫が得意だったりする。
これはきっと俺様しか知らないことだ。
「猿飛」
大きなてのひらで頭を抱え込まれて、背中にあたる自分のものじゃないぬくもり。
いつもは「アニキ」「アニキ」って慕われてるけど、その皮も剥いでしまえばものすっごく寂しがり。
すぐ傍にいるのに何度も名前を呼んでくるのが「寂しい」って証拠。
この人のこんな一面を、きっと誰も知らないんだろうね。
「さるとび…」
「なぁに?」
もう、そんなあからさまに元気ありませんって声出さないでよ。
帰れなくなっちゃうでしょーが。
「猿飛…」
だから、そんな声で
「もう、帰っちまうのか」
話しかけないでってば…
「(ああ、もう、ほんとに…)」
俺様仕事中なのにな。
今抱きしめられてる腕だって、解こうと思えば今すぐにでも解けるのに。
「まだ、帰らないよ」
とことん構ってあげるから。
早く元気におなりなさいな。
「お仕事、まだ終わってないからね」
きっと、鬼の旦那を元気にしてあげるのも俺様に課せられたお仕事なんだって、言い聞かせて。
鬼の旦那が元気になるには俺様が一緒にいてあげなきゃって、ちょっと得意になりながら。
この仕事が終わらなきゃ帰れないから、ごめんね、と甲斐にいる真っ赤な上司に心の中で小さく謝った。
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