小咄
□日和deバイオハザード(びよハザ)
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とある町の小さなお茶屋に一人腰を掛けお茶を啜っている若者が居た。
「はい、お兄さんお待ちどぉ。」
「…どうも。」
「毎度あり〜!」
あまり若くはないだろう看板娘が持ってきた団子を食べつつ、自分の来た道を振り返るも待ち人の姿など影も形もない。
二本目の団子を手に、自分が置いてきたにもかかわらず舌打ちを一つ。
「誰か待ってるの?」
「!」
声に振り向けば自分のすぐ傍に見知らぬ男が腰を掛けている。
「もう少し来ないと思うよ?」
「……」
「だからさ、私と少〜しお話しない?」
「お断わりします。」
何なんだ、この馴々しい男は?
歳は僕とたいして変わらないのだろうが、笠を目深に被っている為、表情を見ようにも弧を描く口元しか見えない。
「いいのかなぁ〜もうすぐこの先では流行り病が流行るんだけどなぁ?」
「!!」
「この先の村を通るんでしょ?聞いておいて損はないと思うんだけど?」
確かに自分達はこの先の村を通って旅をする。流行り病が猛威を奮うとなればそれは一大事以外のなにものでもない。
「…規模は?」
「確かその山の先くらいまでって聞いたよ。とてもじゃないけど広まる前に山越えなんて無理だね。」
「そうですか…ところで、貴方はそれをどちらで?」
「フフ、内緒。因みにそれは『このまま何も起きなければ』のお話だけどね。」
そこまで言うと、男は僕の前に場所を移して笑みを消した。
「流行り病は流行らない。でも、何かは起きてしまうよ。残酷なくらい確実に…。」
「それはどうゆう…」
「コレをあげる。もう、どうしたらいいか解らないって時になったら連れの人にこのアンプルを飲ませて。」
「何です?」
「注意点としては感染してたら意味が無いって事くらいかな?」
「感染?流行り病は流行らないのでは…」
「使う時期によっては毒にも薬にもなる物だよ。ただ、彼以外には毒にしかならないだろうね。」
「要りません、そんな物!」
僕は翡翠のように輝くアンプルと呼ばれた液体を突き返した。男はそれを気にした様子もなく、指差した。
「ほら、来たよ、お師匠さん。」
「!!」
指差すほうを見やると
僕の姿を確認したらしく、何やら喚いてる様子の芭蕉さん。
「それじゃ、またね河合曽良君。」
「何故…!」
何で僕の名前を知っているのか問おうにも振り向いた先に男はもう居なかった。