オリジナル小説

□妖怪大行進
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「所詮、我々の通り穴だから、しょうないだろう」
「まぁ、童子の言う通りなんだけどねぇ。毎回、下駄が脱げている気がして、嫌になっちゃうよ」
 童子と呼ばれた青年はそんな唐傘に苦笑いを浮かべつつ、自分の足にじゃれついている犬のような、オコジョのような生き物――脛(すね)擦(こす)りを持ち上げ、撫でる。
「きゅぅ?」
「今日も今日とて、大行列だ。足に纏わりつかないでくれ。歩きにくいったらありゃしない」
 そう、童子たちの歩く後ろには、わらわらとこの世のものではないモノたちが、わいわいがやがやと騒ぎながら、行進している。人の道を通っているというのにその道ですれ違う人達は全くそれらに気付きやしない。むしろ、それらは人間たちをすり抜けていた。まぁ、時にはゴツンと鈍い音を響かせてぶつかるモノもいたが、人はなんだろうと思うだけで、その存在には気づいていなかった。
「ふむ、これはこれで楽しいが、早々に居場所を見つけてもらいたいな」
「世の中、変わっちまったからねぇ。無理だろうよ」
 蝦蟇(がま)の背中に乗った小さな老人が童子の言葉に答える。その言葉に、童子は「確かに」としか答えられない。コンクリートで固められた家では家鳴は悪戯できず、座敷わらしの住める古い家屋も失われている。また、人を驚かすモノも人に見てもらえないため、驚かすにも驚かすことが出来ず。





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