オリジナル小説

□妖怪大行進
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 気味が悪いほど紅く染まった空と街の境界線に小さい穴が開いた。それは、みるみる大きくなって、どこかへ誘っているような不気味さがあった。そんな穴から、コロンと毛だるま的何かが転げ出た。そのあとに続くように同じような大きさのモノがコロンコロンと飛び出してきた。その後にはのぼぅとした巨大で奇妙な風体のモノがのっしりと現れる。しかし、その巨体は大きくなったはずの穴を塞いでいた。
「おい、早く行けよ。おめぇが邪魔で出られやしねぇ」
「おぅ、出られやしねぇ」
「しねぇ」
「しねぇ」
 妙に高い声が巨大なモノの背を押す。そして、やっとのことで再び穴が開くと、そこから赤子くらいの大きさで、頭に小さな角を生やし、骨と皮だけのように思える体。しかし、おなかだけは異様に膨れた生き物が出てきた。餓鬼と呼ばれる鬼の一種であった。どうやら、これらが先程の高い声の持ち主のようだ。
「おい、木偶の坊、さっさと歩け歩け」
「おぅよ、歩け歩け」
「歩け」
「歩け」
 一番最初に巨大なモノを押すのは決まって提灯を持った餓鬼だ。そして、次にそれに頷きつつ、押すのは木の棒を持った餓鬼。さらに次に押すのは提灯も木の棒も持たない餓鬼ども。どうやら、餓鬼の中にも位があるようだ。ただ、餓鬼の持つ提灯にはほんのり明かりが灯っているのだが、不思議なことに二つの眼がついていた。さらには口もあるようで、提灯の下部をかぱかぱと開けたり、閉じたりを繰り返している。どうやら、提灯は妖怪変化の類であるようだ。しかし、提灯は餓鬼に振りまわされても、暴れるわけでもなく、大人しく提灯の役割をしている。そのことから、長い間、そのように扱われてきたのだろう。それか、ただ単に興味がなく、役割をすることだけが生甲斐であるためなのだろう。
「……あいよっと! ありゃりゃ下駄が脱げちまった。これじゃあ、足が痛いよ」
「ほらよ」
「おう、どうも。っと、もう少し、地面に張り付く感じになってくれりゃあ、助かるんだがね」
 一足だけの足にボロボロ下駄を履き、全くと言いながら出てきたのはボロボロ唐傘だ。しかし、傘の部分には大きな目と口があり、これまた提灯と同じように妖怪変化の類であることが見て取れた。その後に、綺麗な狩(かり)衣(ぎぬ)姿(すがた)の青年が現れる。しかし、その青年の眼は金であり、額には角が生えていた。これもまた鬼である。





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