オリジナル小説

□凍った氷が解ける日
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家の中にバタバタと足音が響く。

「お母さん、私の机に置いてたのどこにやったの!?」
「ああ、アレね。捨てたわ。どうせ、壊れてるんだし、もういらないでしょ」

叫びながら部屋に入ってきた少女に母親は冷たく返した。
少女はその言葉に目を見開いた。

「お爺ちゃんが嫌いだからってそれはないじゃない!お爺ちゃんの形見でもあれば、私の大切なモノなのに」

少女は母親に叫ぶと家を出て行った。
母親はそんな娘の姿をただただ見送るだけだった。

「絶対に見つけなきゃ」

*   *   *

「悠(ゆう)〜、こんなの見つけたぁ」

土で汚れた少年が店内に走りこんできた。
店内には古い柱時計、大きな壺など我楽多が溢れている。
そんな中、青生地の着物に長い白髪の青年が我楽多を棚に並べていた。
走りこんだ少年はその青年―悠の傍に行った。

「おや、これは素晴らしい代物ですね。しかし、壊れているようです。勿体ない」

悠は手に持っていたものを置くと迅狗(じんく)の持ってきたものを手に取った。
そして、呟いた言葉に迅狗は首を傾げた。

「直んない?迅狗ね、悠なら、直せるんと思うんだけどな」

そう進言する。

「ええ、無理ではないですね。直してみましょう」

迅狗の言葉に頷くとカウンターの下から道具箱を取り出し、それを直し始める。
迅狗は座れそうな手頃な壺を探し、それに座って悠が修理しているのを見ている。

「誰が捨てたのかな?持ち主さん、大切にしてたみたいなのに」
「さあね、私たちはただ見つけてあげるしか出来ないんだから何とも言えないよ」




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