迷子の迷子の子猫ちゃん
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暗い路地をひたすら進む。
あれからどれくらい時間が経っただろう。
俺の前を進んでいた黒猫はもう完璧に見えなくなっていて、俺はもの凄い不安に駆られた。
「うぅ〜…ここどこ…?」
もう、ちょっと泣きたい気分なんですけど、俺!!
このまま進んでればどこかの道に出るかもしれない。
…この先が行き止まりとかいう事は考えないようにしよう。
初めは自転車が一台くらいが通れる程だった道幅は、いつの間にか人一人が通れる程度になっていた。
肩からかけているエナメルバッグが引っかかる。
俺は邪魔にならないようにバッグを後ろの方へと避けた。
「…?……明るくなってきた」
真っ暗だった道に微かな明かりが射してきた。
今まで自分の足元さえも見えてはいなかった。
うちの高校の制服は真っ黒な学ランだから余計分からない。
でも、街の明かりと徐々に聞こえてくるざわめきに、やっと人が居る所に出られる!と思った俺は嬉しさのあまり路地の先へと走り出していた(邪魔だゴミ箱ーー!!!)。
「…ッ!やっと人が居る場所に………?」
路地を抜けた先は、知らない場所でした(こんな一節何かの小説にあったな…)。
「こんなとこ、近くにあったっけ…?」
俺が出た先は『夜の街』と呼べるほどネオンが光り輝く所だった。
道を歩く人は大人の人ばかりで、未成年の俺には場違いすぎる。
ヤバイ。こんな所は早く出よう。補導なんかされたりしたらたまったもんじゃない。
あ、でもまだ7時くらいだろうし、警察の人なんかは居ないはず…
「いやいやいや!!俺迷子なんだから、警察に人に道を聞くくらい…ッ!」
そうか!その手があった!!
『俺は迷子です』って顔をして道を尋ねれば、お咎めは無いはず…!!
…高校生にもなって地元で迷子になってたら笑われるだろうけどな。
ホント、ここどこだよ…?
「……おかしい。変な文字しか書いてない」
とりあえず近くの店に助けを求めようかと思ったけど、お店の看板に書かれている文字が読めない。
漢字が難しいとか、英語が分からないとかじゃない(これでも成績は良い方なの!)。
そこに書かれている文字は日本語でも英語でもアラビア語でもなかった。
「何、これ…」
形容しがたいその文字は、ここら辺に沢山存在している。
え、俺頭おかしくなったのかな…?
これだけいろんな場所に書いてあるって事は、この文字はこの地で使われているという事で…
という事はここは日本なんだからこの文字は日本語と言う訳で…
え、これ日本語?パニックを起こしすぎて、日本語さえも分からなくなったのか!?俺の頭!!
…でも、どこかで見た事ある、気がする。
「ってか、母さん達心配してるかも……電話、しといた方が良いよね」
俺はバッグの中から携帯を取り出した。
あ。でも「今どこに入るの?」って聞かれたら何て答えよう…
「大人の人ばかりいるネオン街に居ます」だなんて答えられないよ…ッ!!
電話は止めておこう、と思って、一度取り出した携帯をもう一度バッグにしまおうとした。
その時、携帯の画面が目に入った。閉じた携帯の面にある画面。
俺の目は現在の時刻が何時なのかを確かめていた。
「あ、れ?……画面、映ってない」
携帯を開いてみても同じように画面は真っ暗で何も映ってはいなかった。
あれ?充電切れた?
兄ちゃんにメール送った時は充電満タンだったはずなのに…
変だなと思いながらも、これなら家からも電話は来ないなと思い少し安心した。
家に帰っても、携帯の充電が切れてたから連絡出来なかったと言えばいいだろう。
…家に帰るのが遅れたのは起こられると思うけど。
帰ったら何て言い訳しよう……『迷子になった』?
確実に兄ちゃんに笑われる…