本棚5

□失望もできない
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輝く、夜色の髪が好きだ。
男らしく太い眉も、力強い目元も。
優しく笑う顔も何もかも。
不動明という存在を愛している。
明の細胞一つ一つすらも愛おしい。
そう思うのは、俺が飛鳥了だからなのか、大魔神サタンだからなのか、未だにわからないでいる。
サタンだから、両性生物だから明を愛していると私はゼノンに言った。
確かに女として愛されたかった。
私は、明に女のように愛されたいし、女のように抱いて欲しかった。
しかし同時に、飛鳥了としての意識でも明を求めていた。
了として俺は明に女のように愛されたかったし、女のように抱いて欲しいと願った。
どちらにせよ、抱いて欲しいと願っていたのだ。
心も体も、何もかもを明のものにして欲しかった。
触れるだけでは満足出来ず、触れて欲しいと願った。
親友であるだけでは満足出来ず、最愛の存在になりたいと望んだ。
その結果がこれだ。
デーモンの存在をテレビで放送したことによって、日本は大きく混乱している。
あの放送が外国でも放送されれば、日本と同じような反応が起きるのは確実だ。
話す言葉が違うだけで、奴らは同じ人間なのだから。
すっかり廃墟となりつつある生家であった場所で、夜空を眺めながら明を待った。
明もあのテレビを見るだろう。
そして、俺を探す。
何故だと問うかもしれない。
何故かと言われたら、了はなんと答える。
お前の為だと、言うだろうか。
遅かれ早かれバレることだと、大々的に発表して人間の心を持つデーモンを募るべきだと。
しかし、あの発表ではそんなつもりは毛頭ないのは明白だ。
私は人類など当然必要ない。
明だけがいればいい。
私は私のために、明を追い詰める。
最後に私を選んで、私と生きると言ってくれることだけを望んで。
しかし、明は私を許さないだろう。
正義感の強い明だからこそ、私は恋をしたのだ。
同時に明は俺も許さないだろう。
裏切り者のデーモンハンターを許すほど明は寛容ではないし、怒りは確実に俺に向けられるだろう。
どちらにせよ、避けられない。
戦いは目前。
どうにか明と分かり合えたらと思うのに、うまくいかない。
こんなにも私は、俺は、明を。
朝陽が昇る。
廃墟を白々と照らす。
ああ、来るなと思った。
サイコジェニーのテレパスによる直感ではなく、肌で感じた。
明が来る。
俺の所へやってくると、空気でわかる。
本当に、明は太陽がよく似合う、愛おしい男だ。


「遅かったな、もっと……早く来るかと思った」




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