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□飛び散る赤は運命の赤
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撲殺天使ド●ロちゃんの一部パロディ
ファンタジーな上にちょっとグロっぽい







今まで見てきた人の中で一番、目を惹かれた。
運命だと思った。


◆飛び散る赤は運命の赤◆


ぐしゃり、ごしゃあ。
わずかに残ったままの耳から真っ赤な液体がコンクリートに広がる音が流れ込んで、遅れて骨が砕けている音がしていた事を認識した。
それもほんの一瞬の間で、すぐにそれは何もかもが白紙になって消えていってしまう。
呼吸も心臓も止まって、頭なんか原型も留めていないほどに打ち抜かれているから、ぐしゃぐしゃのどろどろだ。
どうしてそんな事になったかというと、顔の上半分は刺にまみれた鉄バットによって打ち抜かれてしまったからだ。

「あー、もう。またやっちゃったよ…ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー」

投げやりな声が響いた後になって、ようやく俺の意識も景色も五感の何もかもが戻ってくる。
毎回、痛みを感じる間もなく死ねるのはせめてもの少ないのかもしれないけれど、それでも毎回顔を狙われてしまうのはどうしてだろうか。
女の子はみんな、この顔が好きだっていうのに。

「もー…孝支ちゃん、酷いよ〜」
「及川がいきなり後ろから抱きつくのが悪い。反射で殴っちゃうのはお前が一番わかってるだろう」
「だって、無防備なんだもん」
「無防備なんだもんじゃなくて…あぁもう、いつまで座ってんだよ。ほら」

そうやって、なんだかんだ言っても手を差し伸べて座ったままの俺を立ち上がらせてくれる孝支はやっぱり優しい。
そういうさりげない優しさがたまらなく嬉しくて、俺はもう一度彼に抱きついてしまいたくなるのだけど我慢する。
彼は、一種の特殊な体質と言うか、そういう種族と言うか、とにかく特別な現象があった。
それは、背後からの襲撃、いわゆる不審者等に対して反射的に彼曰くエスカリボルグという名前の釘バッドのように刺の生えた金属バッドを振り回してその襲撃対象に対して抵抗してしまうということだ。
しかも、これまた反射で服が可愛いスカートになる。
彼曰く、撲殺天使になってしまうらしい。
下校途中に遠回りした路地で、偶然襲撃者を元に戻している所に遭遇した俺は、返り血を浴びて困った顔をする彼を見て、一目ぼれをしてしまった。
その際に、自分は女の格好をしているけど生物学上は男であって、そういうなんか不思議な現象があるんだと説明してもらったのだけど、よくわからなかった。
けど彼が好きだという事だけはわかったのでオールオッケーだと思った。
うん、オールオッケー。
そうして、よくよく話を聞けば可愛い後輩の飛雄ちゃんの行った先の高校の先輩だから驚いた。
しかもバレー部。
これこそ、まさに運命だと、俺はさっそく彼に猛アタックしたのだけど。
うっかり後ろから抱きつくこと4回、待ち伏せして驚かすこと2回、気配を消して後ろから声をかけること5回。
その全て、見事に彼の振り回す鉄の塊によって肉の塊にされている。
俺が。
そのうちのほとんどが脳漿を飛び散らせていて、首から上が無くなったのが確か2回、地面にたたきつぶされてしまうことが2・3回。
即死の重傷を負ってもなおまだ俺が生きていられるのは、それが天使の名称を冠する彼のおかげだ。
彼の不可思議なセリフによって、全て無かったことにされてしまうのだ。
いや、俺が殴られて血まみれにされた事実は消えないのだけど、その痕跡は綺麗に抹消される。
傷痕はおろか、原型元通りになるのだ。
そのひたすらファンタジーで荒唐無稽で、とても信じられない様な現象だけど、俺にとっては関係ない。
菅原孝支という彼が好きになったのだから、彼にどんな不可思議で理不尽で荒唐無稽な現象がセットであろうと、俺は構わないと思うのだ。
それに、何度肉塊にされても、何度理不尽な攻撃を受けても、彼は必ず元に戻してくれるし、申し訳なさそうに謝ってくれるし、邪険にしながらも優しく俺を受け入れてくれるのだから。

「お前、ほんと、懲りないなぁ」

そう言いながらも、どこか嬉しそうに笑う彼がやっぱりたまらなく愛しくて、後ろからぎゅうと抱きしめてしまって、やっぱりまた鉄の塊が頭に飛んできた。
好きになってくれるまで、俺は何度だって、君のそれを受け止めるよ。







だって、赤は運命の色だもの!











絶対に続かない。





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