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□来たれ、汝甘き死の時よ
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Fate/zero
時雁
「来たれ、汝甘き死の時よ」
コピー本12P
¥100
うすいぺらぺらの変形本になります
しかも過去捏造
中学生雁夜と高校生時臣の話


本文サンプル


 時臣と、付き合うことにした。
 付き合うというのは、買い物に行くことに付き合うとか、旅行に付き合うとか、そういうベターな意味ではなく。時臣と、恋人関係になることにしたという意味で、付き合うことにした。
 そういうと、なんだかハッピーエンドな気がするのだから不思議なのだけど、まるで俺の心境はハッピーや幸福感、充実感とは程遠い所にあるように思えた。程遠いというよりも、真反対の感情が近いかもしれない。
 なぜなら、俺は葵さんが好きなのだから。
 そう言うと、状況がよくわからなくなってくる。
 俺は、葵さんが好きなのに時臣と付き合うのだ。恋愛感情として好きなのは葵さんなのに、俺は恋愛感情もなく時臣と恋人関係になるんだ。
 うん、おかしい話だと、俺も思う。





 ただ、時臣を困らせてやろうと思ったんだ。
 俺と時臣は、世間一般で言えば幼馴染という関係が近いのかもしれない。そのつながりが、世間一般とはかけ離れた魔術というもので繋がったものであったとしても、小さな俺は時臣を実の兄のような気持ちで慕っていたのも事実だ。今思うと、そんな感情を抱いていたなんて気色悪くてたまらないが。
 ともかく、過去のそれらは覆せない事実ではある。
 中学生になって、葵さんとの距離は少しだけ遠くなった。そもそも、葵さんとは三歳歳が離れているのだ。自分が中学に上がる時には彼女は三年生で、すでに自分が知っている彼女とはまた違っているのだ。自分が小学校で過ごした二年と、中学校で過ごす二年は違う。今だって会える機会があるだけよかったのだけど、少しだけ遠くなった。
 それなのに、何故だか時臣と会う回数が多くなった。
 時臣とは歳が五つ離れている。だから、この時の時臣は高校二年生だ。当然、学校は違う。
 それにも関わらず、まるで示し合わせたように時臣との遭遇率は高かった。
 そして、この頃、俺は葵さんが時臣を好きである事に気づいていた。
 禅城は魔術師の家系ではないけれど、特異体質で魔術師の家系には願っていない体質の家系だ。それと、冬木のセカンドオーナーの魔術師の次期遠坂、最近落ち目のレッテルだが魔術師の家系の間桐が一緒にいることはおかしな事ではない。
 だから、時臣と葵さんが一緒にいることはおかしなことではない。
 だから、葵さんが時臣を好きになることもまた、おかしなことではないんだ。
 それに気付いていたから、俺は、時臣に言ったんだ。
『俺と、付き合ってくれよ』
 俺は、葵さんに幸せになって欲しい。
 できれば、俺が葵さんを幸せにしたい。
 けれど、葵さんの幸せを願うなら、落ち目の間桐より、あんなおぞましい蟲使いの家より、宝石で光る遠坂の方がいいのだ。
 だから、俺は葵さんを幸せにできるか確かめることにしたんだ。
 時臣と付き合うことで。
 詳しい話まではしなかったにしても、男と付き合うことを時臣が了承するとは思っていない。ただの、遊びのつもりで、断られる事が前提の発言だった。ついでに、時臣を困らせてからかってやれればよかったんだ。
 それなのに、時臣は「いいよ」と返事をしたのだから困った。
 いいよ。って、それは了承のことを指すんだぞ。


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