本棚4

□懇願
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彼がゆっくりと瞬きをするのを見るのが好きだ。
ビーティーの明るい茶髪の、オレンジにも見える髪と同じ色をした睫毛が震える様を見るのが好きだ。
厚く生えそろった睫毛が閉じられて、ビーティーの綺麗な目が隠れる瞬間が好きだ。
強い光を放つ紫水晶の様な瞳が再び現れるのを待ちわびる瞬間が好きだ。
ふっとまどろみから醒めるようにゆっくりと目を開けて、光を取り込んで焦点を少しずつ合わせていくのがとても好きだ。
それから、僕を見て一瞬だけ止まるのも好きだ。
僕の姿を瞳に閉じ込めてしまうようにじっと見るのが凄く好きだ。
それから、それから。
「公一」
僕を呼ぶ君の声が、大好きだ。
見れば見るほど、ビーティーはどこもかしこも整っていて、まるで人形のようにも見える。
触れたら陶器の様な感触がするのかなと、そう思ったから手を伸ばした。
頬は柔らかくて、指先の形に少しだけへこんだ。
ふっくらとした頬は、僕と同じ少年なのだとはっきりと告げていた。
「どうしたの、公一」
くすくすと笑うとその振動が指先から伝わってくる。
目を閉じて、小さな唇を薄く開いて笑うビーティーはこんなに柔らかいのにやっぱり人形みたいに綺麗で、可愛くて、桜貝の色をした唇の奥に真っ赤な舌が見え隠れするのがアンバランスに思えた。
笑いながら顔を傾けたビーティーが親指を食む。
ちゅう、と吸いつかれるようにキスされて、軽く舌先で舐められた。
その仕草に、触れた唇の柔らかさに、舐めた舌の熱さに、粘膜に、目が離せない。
手に頭を擦り寄せるようにして首を傾けて、なおも楽しそうにくすくすと笑いながらビーティーは僕を見る。
そして、僕の大好きな声で名前を呼ぶんだ。
「こぉいち」
舌足らずに聞こえる声にたまらなくなって、誘われるように顔を寄せる。
きゅうと唇が弧を描くのがはっきり見えた。
そうすると、小さな唇がさらに小さくなったように見えて、このまま一口で飲みこめてしまいそうだなとぼんやりとした頭で思う。
ふにゅ、触れる瞬間の刺激は柔らかいのに強い。
いつだって、頭を鈍器で叩かれたみたいな刺激が走って、顔も身体も熱くて、目の前はチカチカ明滅する。
両手で掬い上げるようにビーティーの顔を支えて、笑みを浮かべた唇にキスをしたまま舌を這わせる。唇と唇の間に舌が挟まって、唾液で濡れていく。薄くだけしか開いてくれないのがじれったい。
でも、がっつくのはかっこ悪いから我慢して、薄く開いた唇の間に舌先を少しだけ入れてみる。
粘膜の気配に、呼吸が止まりそうだった。
このまま舌を絡ませてするキスが、星を見るほど気持ちが良いのを知っているんだ。
君が教えてくれた。
告白も、ハグも、キスも、えっちなことも全部。
全部君が初めて。
「ん……ん…ふ……こーいち…」
掠れた声で呼ばれた名前に、乱れて泣く姿がフラッシュバックする。
イイと、欲しいと、泣いて掠れる声とよく似ていたから。
吸いつく様に音を立ててキスをする。
煽られている。
いつからだろう、きっと最初からだ。
僕は、いつだって君の思惑から外れた事ができないんだから。
「ビーティー、…えっち、したいな…駄目?」
紫色の宝石を見たまま問いかけたら、返事をするよりも早く首に腕を回されて、舌を引きずり出される様なキスをされた。
やっぱり、気持ちが良い。
君とするキスが、一番好き。了

▽えっちしたい、って公一君が言っても萌えるっていう公Bちゃん 中学三年生か高校一年生ぐらい

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