本棚4

□ボーイミーツバニーガール
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「んっん〜ん♪いい気分だなぁ、ジョジョ?」

鼻歌を機嫌よく歌うディオほど、面倒で厄介なものはないと思っている。

「はー……」
「んー…?このディオの媚態にため息しかでないか?ん?」

よくそんな事が言えると思う。
論文の合間、仮眠で横になって、目を覚ましたら両手を頭上に一まとめにされてなおかつ腹の上には頭がおかしくなったとしか思えない格好の義兄弟が乗ってた。
その目覚めが、いかに最低な気分だったか察して欲しい。
と、思うけどディオが察してくれるはずはないから高望みだ。
察してくれても、ディオの高揚を助長するだけだから無駄だ。
無駄だとわかっていながらも僕はディオがいつかわかってくれるんじゃないかと思わずにいられない。

「ディオ…手、解いて」
「嫌だ」
「ディオ…」
「ふふ…動けない方が興奮するだろ?」

興奮するのは君の方だろう、と口先まで上がってきたけど飲み込んだ。
こういう時のディオは、何を言っても意味はない。
むしろ喜ぶ、そういう性癖なんだ。

「ん…はぁ…ぁ…ジョジョ…したくなるだろ…?」
「…えーっと…その、セックスするのはまぁいいとして…その格好は……?」
「バニーガール。好きだろう、紳士様は変態だもんなぁ?ジョジョ」

酷い言いざまに呆れて何も言えない。
紳士に対する冒涜だ。
体にぴったりとしたレオタードに、ベストを着て首にはチョーカーをしている。
リボンタイは真っ赤で、ディオが好きそうな色だ。
薄手のタイツは、女性が履けばたいそう艶めかしい事だろう。
しかし、全てはラグビーで鍛え上げられた男の体が身につけている。
艶めかしさの欠けらもない。
そして極めつけは頭につけたカチューシャから伸びるうさぎを模した飾りだ。
黒い耳は獣らしさはなくモチーフとしてデザインされている。
先日、ラグビー部の先輩につれられて会員制のパブに連れられた。
父と得意先の子息でもあった先輩に逆らえず、また良い酒を奢るという言葉と世界が広がるというそれに興味を惹かれて行った先で、初めてこの服を着た女の人を見た。
惜し気もなく足を晒してホールを歩く様に、絶句した。
タイツを履いているとはいえ、尻から足の先まで、全てが露になっているのだ。
平然と女性を片手に抱いて行ってしまった先輩に置いていかれた僕は、呆然とするしかなかった。
一緒に先輩に誘われたディオが居なかったら、きっと良いように飲まされていただろう。
ディオがうまく言ってくれたから、なんとか最低限居るだけで済んだ。
本当に、ディオがいてくれて良かったと心の底から思ったものだ。
だが、しかし。
それとこれとはわけが違う。

「よく君が着れるのあったね……」
「作らせたに決まってるだろ、間抜け」
「なんて言ったのさ…!」
「余興だって言えば結構許されるもんだよ、ジョジョ」
「……ああ…そう……」

その行動力が、どうして僕の平穏にいかされないのか不思議で仕方ない。
いや、その考えは間違いかも知れない。
僕の平穏とディオの平穏は決してイコールではないんだ。
無理だった。
ディオと平穏には過ごせない。
それは絶対だ。

「じょーじょ?」
「んっ……、…」

首筋を指が滑る感触、くすぐったくて眉間に皺が寄る。
鏡を見なくてもわかる。
ネクタイを解かれ、シャツのボタンを外されていく。
これが、女の人ならまだ素直に喜べる。
今上に居て服を脱がしてくれるのは、両手に余るほど豊満な胸がある女性じゃなくて、両手に余る大柄で筋肉質な男のディオだ。
いっそ滑稽に見えるような姿でさえある。

「…ふ…ふふ……なぁ、ジョジョ。シたいだろ?抱きたいだろ?セックス、したいだろ?」
「………えーっと……あー…」
「あ?」
「いや…あの、僕疲れてるんだよね…」
「したくないのか」
「……………出来れば寝たい」

眠気も手伝って、素直に口に出して欠伸を噛み締める。
仮眠のつもりだったけど、このディオに論文の続きがしたいと言って聞き入れてくれるわけがない。
だから寝ることにする。
なにも、明日に提出の急ぎの論文というわけじゃない。
このまま振り回されるぐらいなら寝た方がいい。

「はぁ?!この僕が、こんな格好してやってるのにか!!!?」
「べ、…別に頼んだわけじゃないし…」
「この…!ジョジョのくせに…ジョジョのくせに……っ」
「なんだよそれ…もういいでしょ…君、女の子ってわけじゃないんだしさ。そんな格好しても…ね?」

ふあぁ、堪えきれなかった欠伸が漏れた。
一度眠気を見つけてしまえば、すぐに瞼は重くなった。
寝ちゃえばきっとディオも諦めるよね。
そう、寝ちゃえばいいや。
おやすみなさい。
明日ちょっと機嫌悪いかもしれないけど、このままつき合わされるよりはずっとましだ。

「おい、ジョジョ!…お、おい、まさか本当に寝る気か?!この僕を…こいつ…くそ野郎!ジョジョ、…おい………………………ふ…く……ん、…ふぅ……あ、ぅ、んっう………ん…………あっ!んっ、んっ……じょじょ…じょじょぉ…っ」

少しずつ小さくなっていくディオの声を夢現つに聞きながら、声が途切れた頃にはああ諦めてくれたんだなと思った。
しかし、腹の上の重さは動かず、明らかに甘さを含んだ声が聞こえ始める。
まさか。
思い至った事実に思わず目を見開くと、馬乗りになったまま自慰を始めてるディオがいた。
予想していたけど、予想していたからこそ外れて欲しかった。
ベストの隙間から手を差し込んで、乳首を引っ張り出して弄りながら、緩やかに下肢を腹筋に擦り付けてディオが口をだらしなく開けながら見下ろしている。

「あっ、あ、ぁ…じょ、…じょぉ…」
「…ディオ」
「抱け…抱けよぉ……俺だけだろ…あんな女より、俺の方がいいだろ……だいて…じょじょぉ…」

下半身を擦り付けながら身を寄せてきたディオは頬に首筋にキスをしながら懇願してくる。
先ほどまでの上から目線の女王様のような態度はどこへ消えたのか。
でも、僕はこっちのディオの方が良いと思う。
従順になったディオの方が、可愛いとまだ思える。

「…仕方ないなぁ。いいよ…でも、手は動かせないから全部君がしてね」
「んっ…!する、するから……っあ!」

腰を少し持ち上げて刺激すると、目の前のディオが面白いぐらいに目を見開く。
涙をしとしと溢れさせて、乱れた呼吸を漏らすディオを見ていると気分がいい。
こんな風になるの、僕の前でだけなんだよな

「ヤって見せてよ。可愛い兎ちゃん」

僕にだけ見せる顔たくさん見せてよ。



若干下衆い感じのする
ジョナサンがサドだと、マゾのディオが大喜びなのです。


▼バニーガールの格好で馬乗りになって誘うディオと、死ぬほどうんざりしてるジョナサン

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