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□ギュスケル小ネタまとめ2
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剣のお稽古ギュスケル

ギュスターヴに勝てない事が増えた。
少し小さかったはずの身長は気付いたら抜かされ、鉄の板を振り回しているせいか腕力も差が出た。
足ではまだ負けないが、体力は僅かに下回る。
減らず口には相変わらず勝てず、唯一完全に圧倒していたはずの剣技もここ最近は負け越しだ。
しかし、その負けてばかりの汚名を今日こそは返上する。

「よっし、こい。ケルヴィン」

幅広の大剣を軽々構えたギュスターヴが真っ直ぐに見据えてくる。
石造りのサーベルにアニマを込めれば銀色の光を湛えた刃になるのを見届け、静かに構える。
町外れの平地の広場は、多少武器を振り回しても被害はない。
洞窟に行って腕試しばかりしては、ギュスターヴに万が一に何かあったら困るからと、そんなに剣の相手が欲しいなら私が相手になると言ってから、3日に一度の頻度で打ち合いをしていた。
とはいえ、アニマを込めない木刀でなく、真剣だ。
互いに加減をしながらも、気を抜けば怪我は免れない。
構えたまま見合い、動くのを待つ。
自分から仕掛けずとも、痺れを切らしたギュスターヴが振りかぶってくる。
だが今日は、その不意をつく。

「っ…!」

強く地面を蹴って、突き出すように刃先を向けて顔のすれすれを狙う。
軌道は鋼の剣で逸らされたが、体勢は崩した。
踏み込んだ体の軸をそのまま前に流し、ギュスターヴの体を追い抜いた所で爪先を軸に体を反転させ、サーベルをギュスターヴの死角から突き入れる。
髪を一房切る。
よりも早く、振り向かれて弾きかえされた。
衝撃に跳ねとばされ、僅かにたたらを踏む。

「く、…」
「あ、ぶね……!」

チャンスを逃した事に舌打ちをしたくなる。
後はもう、小細工はきかない。
アニマを再度こめなおし、直立の構えで黄金の髪を見る。
真剣な顔をしていたギュスターヴが、その一瞬、笑った。
それは合図のようなものだった。
互いに踏み込み、顔のすぐそば皮膚一枚のギリギリを狙って切り込む。
細身のサーベルの自分の方が到達は早く、ギュスターヴの黄金が少しばかり宙に舞う。
勝った、と思った瞬間。
そのまま踏み込み続けぶつかりそうになるまで歩みを止めないギュスターヴに気付いた。
が、後退りするにはまだ重心が戻ってない。
剣を持たぬ手が腰を抱いたかと思うとそのままくちづけられた。

「!!!」

予想外のことに声すらあげられず、突き出したサーベルを取り落とす。
ただの石に戻っていく様を見ることは適わず、目の前には近すぎてぼやけるギュスターヴがいる。
触れるだけで離れ、唇を少しだけ舐めるとギュスターヴはまた笑う。

「は、…な、に…!」

意味がわからず、されるがまま。
見上げるようになったのが悔しいなんて思う余裕もない。

「ん……ケルヴィン、武器落としたな?」
「……は…?」
「なら、俺の勝ちだ」

にや、と笑う顔は腹立たしくて、殴ってやりたくなった。
しかしその手も軽々捕まれ、今度は宥めるようにキスされるのだ。
私がギュスターヴとするキスが好きなのを知ってるからやるんだ。
全く、性格が悪い。だがそうされたいと願う自分もいるから、つい手を出す。
案の定緩やかに顔を狙った手は捕まれて、引き寄せられる。
嗚呼、キスされる。

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