本棚1

□地上という現実から離れた場所で会いましょう
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まず、おかしい事が多々ある。

一つ目、おれが現在いる場所がまるで見覚えがないこと。
どこを見ても俺が寝ていた自室とは似つかわしくなく、むしろ屋外であること。
確かに、昨日俺は自室の布団にはいったのだ、それははっきりしている。

二つ目、服装がおかしい。
Tシャツにトランクスで寝た記憶があるのに、何故かきっちりと服をきていた。
きっちりというか、ジーンズとTシャツの上にジャケットを羽織っているだけなのだけど、それを自分が寝ながら着たとは到底思えない。
結果として着替えさせられたとしか思えなかった。

そして、目の前でにこにこ笑う男。
桐敷家の使用人という、ふざけた外見している、辰巳。
こいつがいるというのがもう、すべての答えを表しているようなものだった。


「や!おはようございます!」
「…なんのつもりだ…」


ベンチに座って眠っていたらしい、体を起こして、目の前に立っている辰巳を睨む。
こいつがこの状況を作った犯人であることは間違いないが、だからといってこの状況を把握する材料にはならなかった。
深くため息をついて、ポケットを探り、しっかりと入っている煙草とライターを取り出して火をつける。
ちゃんと煙草をいれてくるあたり、そこそこにこいつは気が利いている。
だが、何度もいうが、それでこいつを許容できるわけではない。


「まぁ、まずはご飯でも」
「それも大事だが、どういう状況なのかご説明願いたいのだが?」
「やや、ご機嫌ななめですね」
「当たり前だ。まず、ここはどこだ」
「ここは、溝辺の外れにあるテーマパークの入り口です」
「それを証明する物は?」
「入場チケットです」


ぴらりと目の前に差し出されたチケットを受取り、日付を見ると、確かに自分の記憶が確かであれば今日の日付だった。
そういえば、昔に恭子にねだられて行った記憶がある。
そんなに昔の話ではないはずなのだが、村からあまり出ないのですっかり忘れていた。
見ると入場印が押されている…。
入場印が押されている…?


「ちょっとまて」
「はい」
「まさか、もう園内なのか…」
「はい、入口の近くのベンチです」
「…お前、俺を抱えて入場したのか」
「ええ、おぶって」
「馬鹿かお前!!!!!」
「え、でも受け付けのお姉さんに『サプライズをしたいんです』って言ったら喜んで協力してくれましたよ」
「ほんとに馬鹿か…」


襲い来る恥ずかしさに顔をおおい俯く。
なんだそれ、どんな顔してそんなこと言ったんだ。
しかし、寝起きに襲った混乱の方が大きかったせいかすぐに冷静になり、改めて深く息を吐く。





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