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□ついったF/Z小ネタまとめ
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#11夫婦 言切
「や、…だめだ…っ」
「何故ですか…奥方がいるのが気になりますか?」
「ちが…っ、…ぼくじゃなくなるのが…こわい…」
切嗣の腕が首に回る、それが言葉より雄弁に語っていた…… 
言「という夫婦になりませんか?」
切「(アイリ助けてくれ…!!!)」



#11夫婦 時雁
ごく自然にするりと、そして当然のように手を取られたかと思うと時臣は胡散臭くも見える顔で笑って名前を呼ぶ。
「雁夜」
普段は名前でなんか呼ばないで「君」としか呼ばないくせに。
そっけなく「なんだよ」と返せば。
「指輪のサイズはいくつだっただろうか?無論、左手の薬指の」




#11夫婦 バサ雁
うとうとと、気が付けば目が閉じられている。
ソファに座って読んでいた本は閉じられてどこまで読んだかわからなくなった。
「雁夜、眠いのですか?」
隣に座る、精悍な顔に似合う長髪を揺らして騎士は言う。
「かた…かしてくれ…」
「はい、仰せのままに」
「ん…」
「おやすみなさい、雁夜」



あいつは酷く安心した顔をして僕に好きだなんて言う。
そうしてあらがえない力で抱き寄せてくるから、仕方ないというように背中に手を回して抱き締めるふりをする。
(お前が好きなのは、空虚を抱えているはずの、同類の僕なのだろう?)
僕が好きなわけじゃないくせに。
#ただ君だけに恋してる 言切



「君はもう少し、ご飯を食べるべきだ」
こんなに細くては大きくなれない。
とか、親のような事を言いながら二の腕を掴まれる。
それにびくりと震えそうになるのを気力で押しとどめて乱暴にその手を振りほどく。
「うるせぇばかおみ…っ」
何度、何度、お前は俺を好きにさせるんだ。
 #ただ君だけに恋してる 時雁



明滅する視界は黒々とした瞼の裏を映すように陰り、太陽を目の前にするように白くなった。
そして侵食する赤い炎のような揺らぎは、毛細血管が切れて眼球を濡らす赤か本物の火かはわからない。
けど、その赤に誘発されるように思い出したのは、赤いジャケット。
なんだ俺はあいつが好きなのか。
時雁



今の今まで、私が求めてきたのは果たして本当に信心のためであったのか。
それもわからない。
けれど、この白く、人であるのに腹には蟲を住まわせる男を見ていると、とても満たされた気持ちになるのは、この男が私と同様に身体に異形を抱えているからだろうか。
(果たして無垢の信頼心は罪の源泉なりや)
胸の中に蛇がいる。
それは赤い舌をちらつかせて、とぐろを巻いて眠っている。
時折、気だるげに目を開けて、舌と同様に真っ赤な目を光らせて、蛇が目を細める。
神の仕える身でありながら、胸に抱えるのは楽園を追い出された蛇だなんて、誰に言えることだろうか。
(神に問う信頼は罪なりや)
だざいおさむ  言峰



「嗚呼…綺麗だな…」
床に横たわる雁夜の銀髪が、白いシーツに散らばって、キラキラと暖かな光を反射している。
縁側に植えた桜が、春一番に煽られて雁夜の間近まで迫り踊っている。
「桜ちゃんみたいだな…そうだろう?」
桜のように儚いのは貴方の方ですとは言えなかった 
バサ雁



ひゅうひゅう、とかぼそい呼吸の割りに、肺を懸命に動かす姿は痛々しかった。
色の抜けたような白髪も、蟲の這いずり回った肌も、何もかも私の知っている雁夜とはかけ離れていた。
魔力を渡して延命はできても、君を救う事は出来ないのだろう? 
理由もわからずに分かったふりは一人前 
時雁



時折、横たえた身体が不自然に動く事がある。
その動きに反射で首を掴んでから、まだ雁夜が寝ている事に気付く事が、多々あった。
蟲が動いた事によって、意図せず雁夜の身体が動いてしまうのだとわかり、私は小さくため息をついた。 
ヒトの皮を被った異形だと言ったらお前はどんな反応をする 
綺雁



鶴野の髪を見ながら、面影を重ねた。
紫の癖毛は、一度だけ見た事がある父の老人ではない姿のそれとよく似ていた。
殺しても死にそうにない妖怪にしては精悍で、あの顔からあの書斎にある文章の数々が生み出されているならまだ、納得が出来るのに。 
知ってるか俺の初恋がお前の書いた文だなんて
臓雁



時臣と葵さんが恋人同士になってからの事。
二人が、というか、葵さんが怒って機嫌を損ねてしまうという場面を少ないけれど何度か見かけた。
その度に、機嫌を直してもらおうと動く時臣が、俺はたまらなく嫌いだった。
お前が葵さんと別れたくないのは彼女が禅城の娘だからだろ。
俺なら彼女を幸せにできる
雁夜



右目だけを瞑れば当然、左目から光を感じるはずなのに、蟲が蠢く左目は暗闇しかなかった。
見開かれたままの痛みを感じない左目からは、それでも渇きによる生理的な涙が何度も流れた。
その度に頬を伝う水を拭っては、どうか、最期に泣く人類でありたいと願った。 
誰も泣かない世界をください
雁夜



「お前が救いたいのは本当にその娘なのか?」
と、言うと、白髪の男は思った通りに顔で驚いた。
「何言って、もちろんそうに決まってる」
「本当に?」
「強いて言うなら…葵さんや凛ちゃんだって悲しい想いは…」
「本当に、それだけか?」
重ねて問いかけた瞬間、顔に浮く血管がびきりと音をたてた。
白濁した目に意思すら感じるほどに、男はきつく眉間に皺を寄せてこちらを睨んだ。
これも、思った通りの顔だった。
「何が言いたい…」
血を吐く口からは地を這う様な低い声が出たが、これもやっぱり思った通りだった。
私は一度深く息を吸って、笑ってしまいそうな口元を引き締めて吐く。
「お前が桜を救いたいのは、顔が似ているからだけなのだろう?」
言葉に込めた皮肉に、目を見開いて、白髪の髪はまるで威嚇のように逆立っている錯覚すら。
それも、全て想像通り。
「そんなわけ…ッ!!!」
「なら、想像してみろ。もしも、桜が姉だったら、養子に出されたのが凛だったら、もしも……もしも立場が逆であっても、お前は聖杯戦争に参加したのか?」
一つ一つ、吹き込む様に、諭すように言ってやれば、男はすっかり自分の意思に自信をなくしたように、強く拳を握りしめ、噛みしめた唇は痛々しい様相になっていた。
それでも目の光を失わず足掻く姿は。
私にとってはたまらない甘味
綺雁



「いやだ」
キッパリ、ハッキリ、つっけんどん。
そのどれもに当てはまる顔で雁夜に返された。
ふむ、と髭を撫で付けながら考え、じゃあと口を開く。
「私が言おう」
「は…?」
「愛しているよ、雁夜」
すると、何故か殴られた。
優雅じゃない。
#好きってゆって 時雁



「……は?」
理解が出来ない物を見る目で、かつ低く威嚇するような声で雁夜は言った。
猫であったら毛を逆立てかねない威嚇の姿に笑みが浮かびそうだ。
「減るものじゃないだろう」
「いや、あの…意味わかんないんだけど」
「理由はない」
「はぁ…」
「とにかく」
#好きってゆって 
みろ 綺雁


「好きです」
「おう」
「すきです」
「おぉ…」
「すきです、愛してます」
「…なんだよ…急に」
カリヤが不信感を隠そうともせずにようやくこちらを向いてくれたので、内心ほっとする。
無視されたままだったら流石に悲しい。
「いえ、ただ」 
#好きってゆって 
欲しいなと思いまして。 バサ雁



「んッ、ん…ッ」
普段はすました顔して笑うランスロットが、キスの時だけは荒々しいのだ。
与えられるというよりは、奪われるような。
「…っ、カリヤ…」
合間に呼ばれてようやく呼吸ができたと思ったら、また酸欠の海へと押し戻される。
それが、酷くイいなんて、変態かよ。
#キスの日2012 バサ雁



誓いのキスとかいうから、もっとキスって特別なものかと思っていた。
神父の舌が粘膜をさする度に、思考はますます冷めていくのに、体は熱かった。
ぐちりと気泡が潰れる音が頭の中に響いて体が震える。
左側が死んでいるから、きっと心も死んでるんだろうなと、小さく嗤った。
#キスの日2012 綺雁



鳶色の髪を呼吸に合わせて揺らす時臣は、俺によりかかるようにして眠っている。
土曜日のバスは人が少なくて、客は二人しかいない。
少しだけ、少しだけと言い訳をしてバスの揺れを装って、顔を寄せた。
おかしいな、俺はお前が大嫌いなはずなのに。
「…ばかおみ」
#キスの日2012 時雁



顔を寄せて当然のようにキスをしようとしたら、拒まれた。
雁夜は困った顔をして僕を拒んだ。
「…何故?」
困ったのはむしろ僕の方なのに。
「やめろよ…だって、アイリさんいるだろう…」
キスは特別だから、駄目だ。
と、まるで生娘のような事をいうのだから、やっぱり困ってしまう。
 #キスの日2012 切雁



「お前にキスをさせてやろう」
「…はい?」
意味を掴み取れなかった愚鈍な雑種に情けをかけてもう一度言う。
「お前に口付けをする権利をやると言っているんだ」
それでも意味を掴めないこの灰色の男は、ほとほと呆れを通り越して同情する。
「最上級の褒美だぞ、喜べ」
 #キスの日2012 ギル雁



か細い呼吸を繰り返す雁夜は、とてもではないが私の知っている雁夜ではなかったんだ。
髪は白くパサパサとして、左目は自らの意志では閉じられなくなっていた。
私が知っている限り、彼はこちらの人間ではないはずなのに。
呼吸に気を配り、口付け、魔力を流し込む。
#キスの日2012 時雁



光に透けて湖のようになびく髪を掴んで、はたと我に帰る。
まるで、構ってくれといわんばかりの行動だった。
案の定何を勘違いしたか嬉しそうな顔してこっちを振り返るから困ってしまう。
「どうしました、カリヤ?」
何でもないよと言いたかったが口付けが降りてきたので目を閉じた。
#2012恋人の日 バサ雁



髪を撫でられて、身体が跳ねた。
まるで魚の様だと、思う。
水に上げられて不自然に身体を揺らして、言葉を紡ぐことすら満足にできない口はぱくぱくと開閉を繰り返す。
それを見て、時臣は困った様な呆れたようなそれでいて愛おしげに笑うから。
俺はまたよくわからなくなるんだ。
#2012恋人の日 時雁



強く強く、絞め殺してやりたいのに、何故か指は柔らかく頬を撫でて骨の浮いた細い喉を食い千切ってやりたいのに、どうしてか唇は開かず静かに口付けを落としてしまう。
僅かに肩を揺らした雁夜に動揺し、またその事実におののいた。
私はこの哀れな男と恋人の真似事でもしたいのか。
#2012恋人の日 綺雁



捲っていくと黒は段々白へと変わる。
幼少期は黒髪だったのだ私のマスターは。
「ランスロット」
名前を呼ばれると同時にアルバムを取り上げられた。
見上げればマスターがいて、髪は白銀。
「変な顔して…いいんだよ。家督を継ぐって決めたのは俺なんだから。それに」
そうじゃなきゃお前に会えなかったよ。
バサ当主雁



「」
嫌いだ。
「」
大嫌いだ。
落ちぶれなんかじゃない時臣が、俺と違う世界にいる時臣が。
「大嫌い」
好きだ。
嘘だ、嘘だよ。
本当はお前が好きで好きで仕方ないんだよ。
けれど、お前に嫌われたら俺は世界が終わってしまうんだよ。
だから
「俺は、お前が、大嫌いだ」
今日も嘘をつく。
時雁




ランス「カリヤ、本日はハートの日らしいですね」
雁「らしいなぁ」
ランス「つきましては、私と愛の共同作業をいたしませんか?」
雁「ランス…?」
ランス「生存戦略、しませんか?」
雁「ランスロットどうした気はたしかか狂化ってそんな効果なのか?!」
#ハートの日2012 バサ雁



綺「雁夜、早速だけど脱いでくれないか」
雁「お前はあれか、ムードをどぶに捨てたのか」
綺「今日はハートの日らしいからね。君の白濁で私がハートマークを描こうかと思ってね」
雁「おねしょで世界地図みたいな事は止め、あ、ちょ、…まっ……!!!」
#ハートの日2012 綺雁



時「雁夜」
雁「なんだよ時臣はげろよ」
時「今日はハートの日という記念日らしいよ」
雁「無視ですかこの野郎」
時「ハート、つまりは愛だと思うんだ。雁夜…愛してるよ…」
雁「……チッ、うっせぇよ。ばーか……」
#ハートの日2012 時雁



間桐の名字も家も、間桐の血が巡る身体も、無駄に兄弟にも父親にも似ていない、母の面影を思い出す自分が嫌いだった。
鏡を見ればいつでも眉間に皺を寄せているほど、嫌いで憎らしくて。
それでも時臣は君の黒髪が好きだと、言うんだから。それを思い出して益々、鏡の中の俺は眉間に皺を寄せるんだ。
時雁




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