他210DO部屋

□しょーとすりーぴー
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「…レオー、起きろー、飯だぞー。」



俺は朝食を作る手を休めて、レオを起こしに行く。


階段を上りながらそうやって彼の名を呼ぶと、『…今行く…』
という寝惚けたような…いつもの彼じゃ考えられないようなほわほわした柔らかい声が返ってきた。



だがしかし。


こーゆー時は、返事が聞こえても油断してはいけない。
きっと返事をしてからまた布団にもぐりこむ可能性があるからだ。



そこのところは熟知している。
伊達に何年も一緒に暮らしている訳ではない。



俺は、何の迷いも無くばったーん!と盛大に音を立てて、レオの部屋のドアを開け放った。
…案の定。例の彼は布団の中、だ。


「レオ!起きろって!」


ゆさゆさとレオの身体を布団越しに揺さぶるも、効果は薄い。


「…こうなったら…」


最 終 手 段 、だ。



俺はレオの頭にしっかり着けられているヘッドギアの端を掴み。
そして。
一気にレオの頭から外してやった。
刹那、ふわりと橙色の糸がレオの顔に掛かる。
其れを怪訝に思ったか、レオは半分目を開き、俺をじと目で睨みつけてきた。
どうやらギアを外されたことに既に気が付いているようだ。
レオの蒼く(寝起きなのにも関わらず)鋭くなった眼光が、そう物語っていた。


しかしこんなのは日常茶飯事。なれている。
こんなのでいちいち動じてたら、レオを起こすだけで一日が終了しちまうさ。



「…お目覚めか?橙色のお姫様?」


俺はからかい半分でそんなことを口走りながら、レオの右頬をつついた。
…即座にレオに払いのけられるが。


「…うっせぇ、黙れってんでぇ!」

それにオイラは女じゃねぇ!と続けられる。


「分かったって…冗談冗談!そんなにマジになるなよー。」


俺はそんな事を言いながら、レオのヘッドギアを弄ぶ。
レオはその行動を大変不服に思ったらしく、


「あぁ!?マジになんねぇ訳ねぇだろーがこんの阿呆野郎!
 つーかさっさとギア返せ!邪魔で仕方ねぇ!」

と言いながら、俺に必死で飛びついてくる。
そのたびそのたびに、俺は手に握ったギアを頭の上まで上げて、左右に避けつづけた。
俺のほうが、幾らかレオより身長がでかい。
レオの手が届くのは、せいぜい俺の頭くらいだ。


「やーだよ!お前のギア外したトコなんて滅多にみらんねぇかんなー。」






「………こ…の…野…郎…!!!」


…完 璧 に 怒 っ た 。
あー怒らせちゃったよ。やばいよこれ。
ちょっとふざけすぎちゃったかも。

後ろにゴゴゴゴという怒りの効果音がついているが如く。
レオは静かに、しかし確実にキレている。間違いなく。


「え、あ、すまん!ごめんレオ!返すからちょっと待てっt「待てるかぁ!!!!」


うわやばい。
間違いなくこれは殴られる。
殴る蹴るの暴行を加えられますよ画面の前の諸君。
みんなは人のキレるタイミングを見計らってふざけましょーねー…。

というか俺一応格闘系なのになんでレオに肉弾戦で負けるんだよ。
答えはかんたん、レオはブチギレると気迫が恐ろしいほど増すからー。


そんな自問自答を繰り返し。
妙に冷静になって、殴られるのを覚悟し、目を強く瞑った。




しかし。


何時までも来ると思っていた頬や頭への衝撃が来ない。
何事かと思い、目を恐る恐る開ける。

瞬間、俺の視界は金色の糸で覆われた。
…髪の毛?
慌てて頭部を触ると、ギアが無い。
髪を適当に掻きあげ、窃盗犯を睨みつけた。


当の本人、全く動じていない御様子。
俺のギアをくるくると回したり、額部の石を触ったりしている。



「こらレオ!お前俺のギア返せよ!」


俺は最大限に睨みを利かせながら、怒鳴る。
しかしレオは、全く悪びれる様子も無く、


「何言ってんでぇ?これでお互い様だろぉが」


と、意地悪くにやりと笑った。



「…俺はお前が返さないとギア返さねぇからな…」
「オイラはてめーが返さねぇと返さねぇぜ?」
「返さねぇと殴るぞ」
「勝手にしろぃ。その前に燃やす。」
「言ったな?言ったな?俺に喧嘩売ったな?」
「おう。売ったぜ?」
「はーん、久し振りに俺と本気で闘りあいてぇってか」
「あたぼうよ。文句あんのか?」
「いや。ねぇな。」
「じゃぁ」
「「闘 る か」」


俺もムキになって、レオも負けじとムキになる。
売り言葉に買い言葉。
売られた喧嘩は買うっきゃ無い。


結局、この闘りあいは夜遅くまで続いた。
どっちが勝って、どっちが負けたかなんてもう関係なくなって。
終わった時には、二人とももうぐってんぐてんだったけど。
久し振りに、何か充実した感じがした。


雨降って地固まる。
そんな感じかな。





…でも次の日、二人でお昼過ぎまで寝過ごしたのは秘密…


END
 

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