他210DO部屋
□人の不幸は・・・
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「なぁー…頼むよ…ツー…」
「…断 る !」
「なぁー…ホントにさぁ…お前どんだけ強情?」
「それはマターも一緒でしょう?」
「う゛…まぁそうだけど…」
…このやり取りが一体いつまで続くのか…
痛いところを突かれたマターは、そう思い、は、と溜息ををつく。
先ほどから、マターはツーに「族に戻ってこなくってもいいから近くに住んでくれよー…」と言い続けている。
それにはちゃーんとした理由があった。
「な…?今さ、ゼロ様大変なんだって…だからさー…お前がちょっと近くにいてやるだけでも違う気がするワケよ…?」
「ダメです。俺にはもうゼロ様なんて関係ありませんので。」
…やっぱしその一点張りかぁ…。
うー…あん時もっと近くにコイツを追いときゃよかったよー…
…マターは何万回そう後悔したか。
今現在、ダークマター族の最高責任者の『ゼロ』は心身共々に疲れきっている。
…ここ何百年という単位で、一睡もしていないからだ。
…最高責任者が倒れるということは、一族の崩壊を意味する。
そう案じたマターは、ゼロが眠らない原因の一人、ゼロツーを説得しにいったのだが…
当のゼロツーは『そんな事俺は関係ない!』の一点張り。
随分と誰かさんににて頑固に育ったもんだ…
悪い意味でも…
「じゃあさぁ…俺の頼みってことでさぁー…」
「俺とマターも関係無いでしょう?俺は一族を抜けたんですから。」
「えー…だってさぁ、ミラは俺の妹だぜ?
だからお前にとって俺は今義兄だろ?だから義兄さんからの頼みってことでさぁ…」
「…殴り飛ばしますよ?」
「…ごめんなさい。」
額に青筋を浮かべたツーが怖くて仕方ない…。
それに頼んでるのこっちだしなぁ…
と思い、即座に謝るマターであった。
「…いや、ごめんはごめんなんだけどさ、そーゆーの関係ナシにマジ戻ってきてくれっt」
バタン!
マターが話を戻そうとした瞬間、部屋のドアがもの凄い音を立てて開け放たれた。
二人が一斉に振り向くと、そこには…
「…ツー!ちょっと五月蝿いんだけど!誰か居るの…って…
…何で兄さんがここにいるのよ!」
…ミラが居た。
そして後ろにはリム3兄弟。
「よぉー、ミラ、リムラリムルリムロ、元気してたかぁー?」
ドアの音に負けないくらいもの凄い勢いで食って掛かってきたミラ。
それを恐ろしいまでに軽く受け流すマター。
つくづくこの兄弟怖いなぁ…
と感じたツーだった。
「…で、外野はほっといて話を進めるけどー」
「外野って何よ外野って!!!」
「…なぁ頼むからさー…お前とミラの力ならなんとかなるだろ?」
またしても軽くミラを避わすマター。
ミラはえらく不服そうだ。
「無理です。俺達の力はあのピンク球との戦いに負けたせいで半減しましたから。」
「…っちくしょー…あのピンク球ァ…ことごとく俺らの邪魔しやがってぇ…」
「バカね、あの子が居なきゃ、アタシ達も兄さん達もダクゼロちゃんも間違った道に進むとことだったのよ?
寧ろ感謝するべきでしょ?」
「………」
ツーとミラに散々言われ、
今度はマターが不服そうだ。
「…マターさん、こーゆー言葉聞いた事あります?」
「は?何が?」
突然話の話題を変えられ、
マターの眉間には少しばかし皺がよった。
「…『人の不幸は蜜の味』って言いたいんでしょ、ツー。」
「ハァ!?」
ツーが口を開くのよりも先に、ミラが口出しをした。
ちょっと待てよ!
そりゃあ一族抜けたからって言っても酷すぎるだろ!
とか色々ツッコミを入れたかったマターだが、あえて我慢をした。
「むー…そう言いたいんだけど、何か可笑しいんですよー」
「…何がだよー…」
マターは完全に拗ねてしまった御様子。
それを見たツーは、まだまだ子供だなぁ…と思い苦笑した。
「蜜の味な筈なのに、ちっとも幸せじゃないんですよね、俺。」
それが何を意味してるか分かります?
と意地悪く微笑む。
「…え?まさかお前!」
マターは自分に希望の光が差し込んだ気がした。
…『気がした』のだが。
「…ふふー…そもそも我々『人』じゃないし!擬人化してても元は『暗黒物質』だし!」
そう言ってけらけらと笑い始めるツー。
…その一言で希望の光は一気に消え失せた。
マターは、ああそうだ…ツーってこーいう奴だったんだ…
と再確認させられたようで。
妙な脱力感と敗北感が彼の中に湧き上がった。
「はは…ごめんマター、怒った?」
「…もう怒る気力も失せた!」
もう俺今日は帰る!
そう言ってマターは飛び去ってしまった。
…つくづく、昔のツーに似てるなー…
そう感じたミラだった。
「さーて、リムラリムルリムロ、寝てたのにすまん!さぁーてもう寝ていいぞ?」
「…ツー様あんまり無理しないで下さいよ?私たちわかってるんですからね?」
「マターさんと話してたとき、凄くいきいきしてましたよ?」
「あーもー大丈夫だから!俺のこと観察しなくていいから!さっさと寝ろーぃ!」
「「「はいはーい」」」
とたとたと部屋を我先と出て行く三人をみて、
ツーは、ふ、と安堵の溜息をつく。
「…ツー…」
「俺は平気平気!全く意外とゼロ様もセンチメンタルなんだねぇー。」
じゃ、おやすみ。
とミラに告げ、ツーは彼女から逃げるように自室へ向かった。
自室の扉を勢いよく閉じ、そのまま扉に凭れる。
「は………今更…だよ。ゼロさん。」
真っ暗なファイナルスターから見える、真っ暗な宇宙。
その宇宙のどこかにいる『彼等』を睨みつけるようにして、ツーは呟いた。
end