他210DO部屋

□あにといもうと
1ページ/2ページ

「マターは居ますか?」


「あ!ゼロさんだ!」


「ええ、ここに居ますよゼロ様。」



ツーの面倒を見ていた俺に、ゼロ様が声をかけた。
いつもなら、ツーの面倒を見ているときは声なんて滅多にかけないのに。
どうしたんだろう?




「…例の『妹』の件で…」


「え…!?」



ゼロ様はふわりと微笑み、手招きをする。
俺のテンションは格段に上がって、声が若干上ずった。



「え!?何々!?何の話?」


「ツー、ごめんあとで飴とかいっぱいあげるから、ここで待っててくんね?」



「ホントー!?ボク飴くれるならまってるよ!」


…ツーは単純すぎて扱いやすいな…
なんて思いながらも、俺はゼロ様と共に例の『部屋』に向かった。






























「…ここですよ。」




「…うわ…凄ぇ…」


真っ暗な部屋に、ぽつりと水槽のようなものがある。
そのなかで、人型の何かが、此方を見つめ、じっとただずんでいた。



「これが…俺の?」


「ええ。彼女は『ミラクルマター』。
 …貴方の、正式な家族ですよ。」


「でも、何で今更…」


「すみません。彼女は本当は貴方と同時に生まれたのですが、彼女のほうは暴走が激しくてね…
検査をしてみたところ、彼女の身体は殆ど兵器的なつくりになっている事が分かったのです。
なので、彼女が自我を創り出すまで、ここに居てもらおうと思ったのですが…裏目に出てしまいましたかね…」



ゼロ様は俯いて、ぽつり、ぽつりと話し出した。


…俺に妹が居る。
其れをゼロ様から聞いたのはつい三日前の話。


その妹に会えたんだ。
今現在、この空間で。



俺は、ゼロ様の手を引いて、水槽の近くまで歩み寄った。









「…はじめまして、ミラ。」


俺は水槽に手を触れて、ゆっくりと話し掛けてみる。

返事、かえって来るかな…?
その思いはゼロ様も同じなようで、ゼロ様の手にも力がこもった。





…数分たったが、返事らしきものは無い。
相も変わらず、ずっと此方を見つめて付ける彼女。



「…まだ…ダメか…」


俺は誰に問う訳でも無く、自問自答するようにぽつりと呟く。




「…また今度来ますか…。」



「そうですね…。」



俺達踵を返し、ツーのところへ戻ろうとする。

…でもやっぱり少し名残惜しい訳で。
ちらりと後ろをふりむいた。


そしたら。



…ミラが何か言ってる。なんか口が動いてるし。




『い・っ・ちゃ・う・の・?』



…『行っちゃうの?』…俺にはそう言ってるように見えた。


…まぁ、俺の妄想かもしれないけどさ。


でも、一応返しておくよ。



「大丈夫。また来るからさ。」




そう言ったら。


ミラが、ほんの、ほんのちょっとだけど、微笑んだ気がした。


この瞬間が、俺に家族が出来たって実感が、初めて沸いた時だった。

凄い嬉しくて、俺も微笑み返した。

そして、ゼロ様と一緒に、ツーの元へ帰っていったんだ。













…でも。



このときが、俺とミラとの最初で最後の『仲間』としての対面だったんだ。


俺はすぐに彼女を失う事になる。


マジで、皮肉。




end
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ