スマブラ部屋

□要らない優しさ
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「アイク!起きろアイク!」




私は、私の隣の布団で眠りこけている長身の男、
アイクの体を揺さぶりながら、声を荒げた。

しかし、当のアイクは、「んぅ」と唸り、身を捩らせたと思うと、頭から布団をかぶってしまう。









…正直なところ、頭にくる。



確かに、(何故だかしらないが)最近亜空軍の残党が格段に増えだし、
そのたびにアイクは夜遅くまで各地を駆け回っていた。




しかし、それは私にもマルスにも言えること、だ。




おそらく今日も亜空軍掃除の仕事が待っているだろう。
全く面倒な事他ならない。




それなのにコイツと来たら、幸せそうな寝顔で寝やがって…
あ、すまない。口調が可笑しくなった。



まぁ、口調のことは気にしないでくれ。頼む。





…こんな事でイライラしている時点で、私も疲れているいうことなのだろう。
…国を一つ制圧しようとしていた程の私が、まさかこんなにも平和ボケするなんてな。
このくらいの疲れ、以前はどうってことなかった筈なのだが…。








「アイク!…起きてくれアイク!!!」




耳元で大声を上げ、アイクを先程よりも強く揺さぶる。
しかし、コイツは起きる気さらっさらないぜ!という感じで、出てくる気配すらない。














かっちーん☆












「起きろぉぉおおぉ!!アイクーーーッ!!!」






私は遂に切れ、アイクが被っている布団を引きちぎる勢いで剥がしにかかる。
しかし、そう簡単には剥がさせてくれないようで。
アイクも、引き剥がされまいと内側から引っ張っている。


全く、コイツも随分と強情なやつだ…悪い意味で。




…この壮絶な引っ張りっこの末、折れて先に手を離したのは私。




…人の体になっても、私はコイツに必ずと言っていいほど力負けするようだ。
すぐに腕に力が入らなくなる。








「はぁ……もう勝手にしろ!!」





私は遂に癇癪を起こし、アイクに一撃蹴りを入れると、
(蹴った時に、『う…』といううめきが聞こえた気がしたが、あえて無視だ。)
踵を返し、出ていこうとした。




出て行こうとした、のだが。






私の足は突然ピタリと止まった。
私が立ち止まったのでは無い。止められているのだ。
だーれかさんにな…





ふと、足元を見ると、布団から伸びたアイクの手が、私の両足首を掴んでいる。




ある意味、ホラーに近いぞこれは。




「離せ!」






ぐいぐいと強引に足を進めようとするも、全く動かない。
その抵抗は、全く意味を成さないのである。
…腕力どころか、脚力すらこいつの腕力にはかなわないということか…。情けない…





「はぁ…何のようだアイ―――」




私は抵抗を止め、溜息混じりに反論しようとした。



その時。





アイクが突然私の足を布団の中に引きずり込んだ。


あまりに唐突な事だったので、抵抗する暇もなく、私の両足は一気に布団の中へ。




「うぉわっ?!」




足を引きずり込まれたことにより、私はバランスを大きく崩し、
まるで漫画で、びたーん!という効果音がつくような感じで、思いっきり転ぶ。






…今の一連の動作の間に、私の体はもう腰あたりまで引きずり込まれていた。
流石に危機感を感じた私は、ギャラクシアを抜き、











…アイクを斬りつけた。























…のではなく、床に突き立てた。
フローリングの床がメシリと音を立てる。



後で下の階の者に謝っておかなくては。
そんな事を考えている場合ではないのだが。








「…ぐっ…う……」





私は突き立てたギャラクシアの柄を両手で握りしめ、なんとか持ちこたえた。








しかし。

先程も言ったように、私は必ずと言っていいほどアイクに力負けする。


まずい。

既に手の感覚があまりない。
今回ばかりは、自分を非力にした奴を恨む。
くっそ、誰だ私を非力設定にしたのは!あの手袋兄弟か…?






「ぐ…うおぁっ!?」







…いきなり、先程よりも強い力で引かれ、手が完全にギャラクシアから離れてしまった。
必然的に、私は布団の中へ全身引きずり込まれる結果となる。




「く…!何だアイク!離せ!!!」



コイツ、引きずり込んだかと思えば、私にしがみつくような形となって、
絶対に私が逃げられないような状態にしている。

…くそ、この性悪池め…っ!





私は何とか脱出しようと、アイクの腕の中でもがくが、全く効果がない。
それどころかアイクは、より一層腕の力を強めていく。






…先ほどの事で、手がだるい。
そして何より、今は真夏だ。
そんなときに布団の中に引きずり込まれたんじゃ、暑くてたまらない。


暑さの為、抵抗する気力すら失せてきた。


「は…」




今日何回目かも分からない溜息をつく。
暑い。何か、長距離を走りつづけたような、そんな感覚だ。




次第に、私はもがく事すら億劫になり、だんだんと抵抗を止めていった。
暑くて体力の消耗が激しすぎる。



「うわっ!?」



…突然、アイクは私を反転させた。
…私とアイクは今、向き合うような形となっている。


…先ほどからアイクはずっと無言だ。
逆にそれが怖く、額に暑さのものとは違う、嫌な汗が流れた。





「アイク!貴様…いい加減に…」




「誰がするか。」




…第一声がコレですかアイクさん!?
低いトーンの声が耳元で聞こえ、体が硬直する。

冷や汗がツ…と頬を伝う。
アイクは、有無を言わさずそれを舐め取った。



「な゛っ!アイ…」


「少し黙ってて。」



そう言ってアイクは一旦反対方向を向く。
その間も、片手で私の体を押さえつけていて。
動こうにも動ける状態ではない。



「?」




私が成す術もなくじっとしていて、少し経った。
突然、アイクは私のほうへ
体を向ける。





「ふむっ!?」




そして、いきなり口付けられた。
いや、初めてでは、ないの、だが…



…幸い、すぐに口は離れた。
しかし。




(今…何か甘い味が…)




そう自覚した瞬間、凄まじい眠気が襲い掛かってきた。
果物や、砂糖などの、そのような類の甘さではなく、
何か…薬品的な、嫌な甘さ。




「…おやすみ、めた。」



(薬…!?)


口内の甘さと、今のアイクの発言で、『薬』と言う文字が、脳内に浮かんできた。





「おい!…アイ…ク…貴様…何…を……飲ま…」



睡魔と必死に戦いながら、私はアイクに問う。
いや、問う、というよりも、怒鳴った、というほうが適切だろうか。

しかし、結局睡魔には勝てず、私の意識は暗転していく。


完全に視界が真っ暗になる寸前、アイクが何かを言った気がしたが、
完全に聞き取る前に、目の前が真っ暗になった。









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