書庫-壱-
□春風ト恋ゴコロ
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「慶次君、付き合って欲しいの」
見慣れていたはずの、その娘が別人に見えた。
いつも仲良く話をしたり、じゃれたりしていたクラスの女の子から告白をされた。
当たり前のように友達として見ていたから、そんな言葉が彼女から聞かされるとは思ってもみなかった。
好き。
そんな言葉を聞くのは何度目だろう。
告白もこの学校に入ってから、何度もされた。
けど、部活中心の生活だったし、彼女なんて面倒だった。
クラスの奴らは、彼女がどうとか言うけど、そんなの自分には関係ないのだと、
今までは、そう、思っていた。
夕暮れの校舎は静かで、お互いの沈黙がことの重さを語っている。
「それとも、他に好きな子がいる?」
その娘は躊躇した様子で尋ねた。
ズキン・・
好きな子。
いる。
誰よりも大切な人。
あの人がいるから、毎日が幸せだと思える。
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