頂きモノ

□mutter
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エリオット!」

ああ、また始まった。

「なんだ」
「なんだって、いや、お前が歩いてるのが見えたから………」
「特に用があるとかじゃないのかよ」
「まぁ…」
「オレが物凄く急いでたらどうするんだよ」
「謝る」
「バーカ」

前方約五メートルのところに、ギルと義弟を発見。
いつもみたいに仲良く他愛もない話。
エリオットの学校のこととか、朝食のこととか。
普通に普通の兄弟なら、普通にするような会話。
ああでも、そこに僕はいないんだ。

「ところで、リーオ知らないか?」
「いや、見てない」
「そうか」
「何かあったのか?」
「あいつ、オレの部屋に大量の本を置きっぱなしなんだよ」
「片付けは苦手なんだな」

苦笑するギル。
それに、苦手なのはオレじゃない、なんて仏頂面で呟くエリオット。
ねぇ、気付いて?

ギル ギル ギル

「あ、ヴィンス!」

気付いた。
振り返り、ギルが笑いかけてくれた。
嬉しい。
ギルが側にいてくれるだけで、僕は幸せ。
なのに

「ギル、今から何かやることある?」
「え?」
「久しぶりに一緒にお茶でもしようよ」

美味しい紅茶が入ったんだ。
外国の、いかにも高級品といった感じの紅茶。
上品な香りに、深い苦味と甘味。
ギルと飲むために、取り寄せたんだよ?



「悪いな、今からエリオットの部屋の片付けを手伝おうと思ってたんだ」



ほら、また。
エリオットだ。
どうして?
オズ=ベザリウスがアヴィスに堕ちて五年、やっとギルも落ち着いてきたのに。
今度はエリオットなの?
僕じゃないの?

「ヴィンス………?」
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