春の朧月夜には

□始まりの桜の木
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見つめる我の瞳…

其れはしとやかな愁いを孕んで…。


桜の花弁がひらひらと舞い落ちる。

桜を見つめる夕霧。

手を伸ばせば掴める桜の花弁。

「夕霧…」

優しい声に夕霧が振り向けばそこには桜鬼がいた。

桜鬼は夕霧の許婚である。

元々両親が決めた政略結婚であったが、互いの姿を見た瞬間惹かれ合った。

俗に言う一目惚れ。

夕霧は桜鬼の方を見て微笑した。

「如何なさいました?桜鬼殿」

「今年は特に桜が綺麗だ…。其方と一緒に桜が見たい」

桜鬼は夕霧と目を合わせずに微かに頬を染めて言った。

「いいですね…。では身支度をして参ります、下で待っていて下さい」

桜鬼は頷くと、踵を返して夕霧の部屋から去った。


二人が愛し合っていなければ…あんな悲劇は訪れなかったのに…。




「(だってしょうがないじゃない…愛してしまったんだもの…)」
 

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