♪執事が7匹。
□1匹目:「迷宮珈琲館」
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――東京都某所。
少し歩けば交通量の多い大通りがある、とあるひっそりとした裏通り。
ここには知る人ぞ知る執事喫茶があった。
異国情緒を醸す、欧風な造り。
『迷宮珈琲館』
ネットページを持たず、取材の件は一切お断り。
勿論、開店当初はある程度のチラシ撒きなどの宣伝はしたが、それ以後はネット以外のクチコミで客を確保している。
だからたまーに赤字の危機に直面したりするが、なんとか乗り越えてきたという。
店の入り口をツタが覆い、更に雰囲気がでるその店。
「お帰りなさいませ。お嬢様」
マスター率いる執事従業員7人とパティシエ2人で経営しているその店には――
知られざる秘密があったのだった……。
学校帰りに塾へ行き、帰宅の頃にはいつも空に厚い暗幕が覆いかぶさる。
空を見上げるたびに地方に住んでいた頃いつも見ていた空一面の美しい星空を恋しく思う。
自分は地方出身で、小学校まで向こうで生活していたが父の仕事の都合でここ、東京に引っ越してきた。
中高一貫の私立校に通い、5年目。
高等部2年、あたし西城椏夜[サイジョウアヤ]は、いつもの人の多い通りを歩いていた。
「あっ!!すっ、スミマセン」
地下鉄の出入り口から規則的に流れてくる人ごみを掻き分け、ぶつかりながらも進み行く。
そして横断歩道の赤信号に足を止められる。
……すると立ち止まった横断歩道の先に1匹の猫が佇んでいるのに気が付いた。
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