†くすぐったい日常


□温度
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ピピピ ピピピ…
規則的になる目覚まし。


耳障りだなぁ、もう…


暖かい布団の中、目覚まし
を探して手を伸ばしながら
体を反転させると視界に黒
くフワフワしたものが飛び
こんできた。


「?!」


声こそ出さなかったが、驚
きで硬直してしまう。

バクバクと尋常じゃない速
さで心臓がハネあがる。


…何??


まだ寝ぼけたままの目をこ
すり、よくよく見ればなん
だか見覚えのあるような。


「髪?」


こんなクセッ毛の持ち主は
一人しか思い当たらない。


―竜崎…


そっと覗きこむと、案の定
いつの間にか潜りこんだ彼
が丸まって眠っていた。

その姿はまるで、冬にコタ
ツで丸くなって寝るネコの
ようで可愛い。


そう思ったら、何だかぎゅ
うと抱きしめてあげたくな
って、そっと彼を包み込む
ように抱きしめる。


触れた部分が温かくて、優
しい気持ちになる。

鼻先をくすぐる髪のにおい
も愛しい。


そのまま髪に顔をうずめて
頬擦りする。


「…んぅ…」


その刺激がくすぐったかっ
たのか、彼が寝ぼけたまま
ぎゅうと私に抱きつく。

子どもがお母さんに甘える
ように。


その仕種があまりにも可愛
くて、ジタバタ身悶えして
「萌ぇ〜」と声に出したい
くらい可愛くて。

普段の彼からはおよそ想像
もできないから、そのギャ
ップは半端じゃなく。


そんな彼を独り占めして、
こんな幸せな時間をすごす
私はなんて幸せ者なんだろ
う。

ぴったりと密着した彼の体
温と、私の体温がまざりあ
って心地よい温度。


今日の予定は全部キャンセ
ルして、彼が目覚めるまで
こうして抱き合ってようと
思う。


この心地よい温度の中にた
ゆたうように眠れば、一瞬
の幸せが永遠のように続く
から。


目を閉じて呼吸まで重ねれ
ば、きっと夢でまであなた
を独り占め―…

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