Another World

□knight×prince
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第一章〜One's First Impresion〜


 ヴィリジアン=モーヴ=アイボリーは女好きのバカ王子だ。
 少なくともセピアはそう思っている。
 セピア=セルリアンは女騎士。王子護衛の任に就く以前は、旅をしていた。
 街から街へ、護衛剣士を主に生業として。
 そんな一介の女剣士が、王子付の騎士兼お目付役となったのには訳がある。
 それは王子のたった一言。
“自分の護衛は女でなければ嫌だ”
 といったもの。
 そこで困った城の者が、セピアの噂を聞きつけてやってきた。

 それは丁度宿で、酒場で知り合った商隊の親方と、護衛交渉をしている時だった。
「セピア=セルリアンという者はいるか!?」
「……私がそうですが。何か?」
 突然の訪問者に、セピアは怪訝そうな顔をする。
「おお、そなたがそうか。ようやく見つけたぞ。すまないが、我々と一緒に来てはもらえまいか」
 安堵した表情でそう言われ、だがセピアは警戒して問う。
「……貴方は?」
「申し遅れた。私の名はボルドー=カーキー。ヴィリジアン=モーヴ=アイボリー王子殿下の使いの者」
「……アイボリー国の王子が、一介の剣士である私に何の用が?」
 セピアが驚きを隠してそう聞くと、ボルドーと名乗ったその男は、疲れたように溜息を吐いた。
「……実は王子が“護衛は女でなければ嫌だ”と申されて……強い女性を探していた所、そなたの噂を耳にしてな」
「つまり私に、王子の護衛をしろ、と?」
「左様。勿論、正式に騎士として雇い入れたい」
 その言葉にセピアはしばし考える。
 護衛剣士を生業として生計を立ててはいるが、セピアは所詮女剣士。
 その事で足元を見られ、護衛交渉が上手く行かない時もある。
 現に今だって、相場の半額しか出さない、と護衛料を値切られていた所だ。
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