Another World
□Be-lost...in Love
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Be-lost...in Love
暗く、冷たい城の中。
“最近、我等の同胞が次々と人間によって倒されている”
声だけが、重く響く。
“……行け、サルドクォーツ”
「御意」
魔王様から直に下された、俺への命はただ一つ。
我等魔族に仇なす人間を探し出し、殺す事。
この世を魔族が支配し始めてから数十年。
人々は魔族の影に怯えて暮らしていた――。
サルドクォーツは、手始めに一番新しい被害場所へ来ていた。
「さて、どうしたものか……」
ここを拠点にしていた魔族は全て滅ぼされた。
だが、これといって手掛かりも無い。
一番手っ取り早いのは、近くの街を襲う事。
しかしこの場合、それが賢いやり方とは思えない。
相手は相当な手練だ。数人でパーティを組んでいる可能性もある。
こういう場合は、警戒されないように近づいて油断させ、その隙を狙い襲うのがベストだ。
「しかし、相手の事を何も分からないのでは……」
そう、生き残った者がいない為、相手の情報は皆無だ。
顔はおろか、年齢、性別、使用武器、人数までもが未だ謎。
こんな失態、人の世を支配した我等魔族の間では、前代未聞だ。
取り敢えず、サルドクォーツは人間の姿に変化する。
「まぁこんなものか」
元々人間に近い姿をしている魔人の彼にとって、人間に擬態する事はさほど難しい事ではない。
とはいえ、変化の能力を持つ魔人も希少なのだが。
サルドクォーツは情報を得る為、近くの街へ行く事にした。