男子の健全の会話 ※どこまでもアホ馬鹿くさい内容です。













僕は君がいないと不完全なモノだから。君がいないと困る。
そんな事、口が裂けても言わないが。心ではいつも呪文のように唱えている。
彼女は俺にはもったいないくらい、いい女だから。
顔が良い訳でもないし、スタイルがいい訳でもないけど…。
他の奴にはない「何か」を持っている。多分俺は彼女のそこに惹かれたんだ。


「棗はずるい」
「何がだよ」


綺麗な唇に大きめのコップを押し付け、流架はぐびぐび中身を飲んだ。
プハーッっと豪快に息を吐いて、足はあぐらをかいている。
周りに女子がいないから、かっこつけなくても平気なんだ。
いつもは気にして「いい男」を演じているけれど。
小学生でも、やっぱりそういうのに気を使ってしまう男心。


「佐倉の事だよ。折角俺が引いてやったのに、まだしてない訳?」
「引いてやったって何だよ。みかんは最初から俺に惚れてたぞ?」
「うわー自意識過剰だよ棗ー」


ナルシだナルシーと繰り返し言う流架に、手近にあったクッションを投げる。
ボスッっと音をたて、顔に直面。


「痛いよ、自意識過剰でナルシな棗」
「どっちの意味で痛いんだよ?っていうか、俺の悩み聞け!」
「ハイハイ、佐倉とチューができないんでしょ?」
「チューってきもいぞ。うん、まぁキス…なんだけどな」
「まったくねー、普通にキスしたい!って言えばいいじゃん」
「俺がそんな事言えると思うか?」


無理だね、と流架は即答した。キラキラ光る瞳を細め、笑う。


「意地悪だなお前」
「うん、棗だけにね」
「ひっでー奴」
「あはは、そんなひっでー奴に乙女な悩みを話してるのは誰かなぁ?」
「ここの俺です」
「うむ、よろしい」
「―――で、俺は……どうしたらいいんだ?」
「普通に言えないなら…そうだね、押し倒す」
「よし、それでいこう」
「ちょ、まって棗!あー!何処行くんだよ!何コンドームポケットにいれんだよ!?」
「押し倒して、キスして、初××、完璧だ」
「全然完璧じゃない!まって、まてよおい!アホ棗!」
「何だよ、ついてくんなよ」
「佐倉はまだアレがきてない!だから、××は無理だ!しかも今、夜だ!
 もう佐倉寝てると思うけど!」
「平気だ。アレがきてない方が…いいんだ。うん」
「何自分で納得してるの!?」
「それに…夜で寝ているアイツを襲うのがいいんだろ?」
「馬鹿!何その「あ、やちゃったドッキリ☆ハプニング♪みたいなのは!」
「お前こそソレ何だよ。―――っていうか冗談に決まってるだろ」


いきなり正気に戻った風に、棗はキョトンとして肩をすくませる。
一方流架は、魂が抜けたように疲れた顔をしていた。


「じょ、冗談なんだ……そうだよね…うん…」
「アイツとの××はアレきてすぐにだ」
「……………おい」
「まぁソレは置いといて、」


流架と棗はふたたび部屋に戻り、座った。
時刻は深夜1時。さっき飲んでいたコーヒーが冷め切っている。


「キスねー…。本気で言ってるなら…」
「言ってるなら?」
「好きだって言ってから、佐倉の腕を優しく掴んで、顔を近づける」
「そんで?」
「そんでって…そうしたらキスするんだよ」
「だから俺ができる訳ないだろ」
「クリスマスの時したのに?」
「……あれは…あれ…は」
「普通にそうすれば蜜柑も目閉じて分かってくれると思うけど」
「おい、今どさくさにまぎれて蜜柑って下の名前呼んだだろ」
「いいじゃん別に。とにかくさ、キスは自然な流れだから、さ。
ムードある場所で、キスを誘うような…そんな感じ」
「……そうか」


そう呟くと、棗は立ち上がり、じゃあなと言って部屋を出た。
あわてて流架は扉を開けて、棗を呼ぶ。


「棗ー」
「何だよ」
「俺の参考になったかー」
「あぁ、まぁーな」


ふふっと笑って、流架は扉を閉めて、欠伸一回する。


「あー俺も彼女欲しいなー」





俺はアイツがいないと不完全なモノだから。アイツがいないと困る。
そんな事、口が裂けても言わないが。心ではいつも呪文のように唱えている。
アイツは俺にはもったいないくらい、いい女だから。
顔が良い訳でもないし、スタイルがいい訳でもないけど…。
他の奴にはない「何か」を持っている。多分俺はアイツのそこに惹かれたんだ。

俺は流架にそう言ったんだ。よくまぁこんな恥ずかしい事言えたもんだな。


「さぁーて、みかんを襲いにいきますか」





(20060504)

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