短編
□零短編
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高い高いビル街のひとつの屋上。照らす月は銀色。
ひとつ、息を吸った。
香る匂いに今までに無い酷い緊張が押し寄せてくる。
濃厚な血の香りは思考を麻痺させる程濃く。
「居るんでしょ…蒼夜」
魔丁銃を両手に抜きながら言った。
くつくつ、喉を鳴らして笑う声。銀の髪に赤い目、正端な顔立ちの青年。
「もうSランク任務?駆け上がるの早いねぇ…サラちゃーん♪」
任務はもう直ぐ三桁目だ…御上はサラを試そうとしていた。
その為か、名が知れ渡るのにも時間は掛からず、この男の耳にも渡った様だ。
「闇の王ね…貴方が」
「ご名答ー。最近歯応えの無い奴等ばっかりでよー」
いきなりの愚痴の様な口調に一歩下がる。一層嘲笑を濃くさせ、言った。
「アンタは楽しませくれよ?」
突如飛んで来た何かを避ける。見れば氷の塊だ。
「ほらほら、ぼーっとしてっと、」
目の前にいきなり現れた蒼夜に後ろに飛び退く。だが、頬を鋭い爪先が掠めた。一筋血が流れる。
「っ…」
「良い匂いだ…食べて良い?」
「悪いけど、私Sなのよ」
「S同士か…共喰いだな」
楽しそうに良い放つ彼にとってはただの簡単なゲームだろうか