カレーの王子様。

□トラブル発生!
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「はぁ・・・。」

その後姿が見えなくなるとジョウジくんがため息をついた。

「ったくなにやってるんだお前は。」

ぐりぐり頭をなでられて部屋に戻った。


部屋に座りなおしてジョージくんと向き合う。

「ごめんなさい。」

「謝られてもなぁ・・・。

とにかく、おばさんに電話する。」

「やだ!!こんなこと恥ずかしくて言えない!!」

「おばさんは都会に娘を一人で住まわせていつも心配してるんだぞ。

おばさんだけじゃない、おじさんだって瑞貴だって心配してる。

ちゃんと話して安心させろ。」

ジョウジくんはマジメな顔して怒る。

「やだ・・・だって・・・ムリヤリ出てきたのジョウジくんだってしってるでしょう?」

縋るようにジョウジくんに頼み込む。

「だから?

おばさん達が反対したのも今ならうなずける。

まきはいつも隙だらけだからいつかトラブルに巻き込まれるんじゃないかって、オレもずっと心配だった。」


「だけど・・・。」


ジョウジくんは私の言葉を待たずに携帯をかけようとする。

このままじゃ本当に家に電話されちゃう!!

焦ってどうにかそれを阻止する方法を考える。


「・・・じゃぁ、私もお母さんに言うからね!」

そう言った私を訝しげに首をかしげながらジョウジくんが見つめる。

「・・・なにを?」

ふるふると両手を握り締めて唯一の私の切り札を出す。

「ジョウジくんがキスしたって!!」

「・・・・は?」

ジョウジくんは固まった。

そう、なんかいろいろですっ飛ばしてたけどこの前の事許したわけじゃない。

いきなりあんな事したくせに!!


「したじゃない!!この前!!」

大きな声で責め立てた。

「あれは・・・ふざけて・・・。」

携帯を閉じながらしどろもどろのジョウジ君。


「うそ!!した!!」

「イヤ・・・キスじゃないだろ?」

ぽりぽりと首をかしげながら頭をかくジョウジくんのとぼけた態度にかぁーっと血が上る。


キスじゃん!!

唇舐めたじゃん!!

あんなのジョウジくんの中じゃキスにも入らないの!?

挨拶代わりとか??

そんなの私の常識には入ってないんだよ!!


「もぉー!なんでもいいもん。

言ってやる。言いつけてやる!!」

家へ連絡される事よりもだんだんキスの事へ腹が立ってきた。


「バカか・・・そんなことしたら余計に立場悪くなるぞ。」

はぁっと呆れたようにため息をつくジョウジくん。

「うぅ・・・いいもん。

こうなったらジョウジくんも巻き添えにしてやる!!」


「お前・・・今助けてもらったばかりの恩人になんて事だよ。」


「・・・・そうだけど、でも許してないんだからね!!」

ぷぅーっとふくれる私に再びジョウジくんは盛大な溜息を吐き出した。


そしてズイっと私に顔を近づける。

「じゃあ、交換条件だ。」

「っっ!?」

急に間直に迫ったカッコイイ・・・

この前私にキスした・・・

ジョウジくんの顔に焦って目を見開く。

マジメな顔を崩さないでジョウジくんは交換条件を告げる。

「おばさんには電話する。

変な男が付きまとっていた事は報告する。」

「うーっ。」

「でも、男が勝手にだ。

そういうヤツでどういう脅され方してたかは言わない。」

「・・・・本当に?」

ほっと・・・した。

でも、交換条件の続きが残っている。


「その代わり、まきはうちに来い。」

ジョウジくんはそう告げた。


「・・・・へっ?」

間抜けな声を出すしかない。


ナニソレ??

黙ってろとかじゃないの??


ジョウジくんは元の姿勢に戻るとチロリと私を睨みつける。

「前から思ってた。

まきの一人暮らしは危なっかしい。

うちならねーちゃんもいるし部屋も余ってる。

あんなヤツが付きまとう心配も無い。」


「・・・でもぉ。」

いくらイトコとは言え人様の家に間借りさせてもらうなんて気が引ける。


「だいたい、女一人暮らしでセキュリティもまったくないこんなアパート危なくて仕方ないだろ?」


「だってうちの仕送りじゃ・・・。」

うちはそんなにお金があるわけじゃない。

大学の費用、私の生活費、仕送りだけじゃ足りなくてバイトもしてる。

オートロックもなんもないアパートで、駅から遠くたって文句は言えない。


「うちなら家賃もいらねーぞ。」

「・・・でもぉ・・・。」

二人きりじゃないとは言え

ジョウジくんと一緒に暮らすの??

私にキスしておいてあれはキスじゃないなんて言うこのカッコイイイトコと?

私・・・・


「イヤなら全部おばさんに言う。どこのどういう男にナンデ脅されてたかってな。」

ひらひらさっきの紙をちらつかせる。

合成って言われても自分に変わりないそれはとてつもなく恥ずかしくて・・・

ばっと飛びついて奪い返した。


これを話したら・・・


高校時代の恋愛事情までバレちゃう。

親にセックス事情知られるなんて・・・

恥ずかしすぎる。


「それに・・・あの男。

今回の事で本当にあきらめればいいけど、

オレがいない時にまた何かあっても困るんだ。

ずっとついててやれる訳じゃないだろ?」

急に声が優しくなって心配そうに眉をひそめるジョウジくん。


とたんに罪悪感が押し寄せた。


この数週間・・・本当に怖かった。

一人暮らしにはやっと慣れて来たけど、今回の事でその怖さをより実感してた。


人が側に居るのはいい。

一人っきりの部屋よりホッとできるはず。



上げたり下げたり、

ジョウジくんの言葉は私をまんまと丸め込む。

分かってるよ、そんな事。

うまーく言いくるめられてる感満載だって。

だけどね、

丸め込まれたいって思ちゃう。


「うちに来い。」

優しい目で私を見てそう言うジョウジくんに

私はこくんと首を下げた。
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