散文

□染み広がる傷に
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俺は知念の手をぎゅっと握った。相変わらず反応は無いけれど。

「いなぐはいい。わん見ちんまー」
「凛はわんが好き?」
「うん、好き。しにかなさん」
「ゆくしだばぁ」
「ゆくしじゃない、好きさぁ」

知念は少しだけ笑った。
それから俺たちは、さっきの女子が死んだらどんな人が泣くのか、どんな殺し方が一番苦しいか、自分が死ぬならどんな死に方がいいかを話し合った。知念は珍しく楽しそうに話していたから、俺もとても楽しかった。

「知念」
「ん?」
「わんを嫌いになったらわんをくるして。この手で」
「わぁが?」
「やぁが」

知念に嫌われた世界に生きていたくないから、と言ったら、知念は

「にふぇでーびる」

と、極上の優しさを浮かべて笑った。




2008/04/06
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