散文
□ちゅらさん
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平古場は自分を綺麗にするのが好きだった。だから化粧をした。俺にはよくわからない道具を鏡台(これも平古場が持ち込んだ)の前に並べ、顔に塗り付けた。
「凛よー、くぬ死体どうするつもりだばぁ?凛がキャプテンにくるされんど」
「あぁー…埋める?」
「いいのか、それで」
「つーか待って。まだ終わってねぇさ」
凛は鏡の中の自分に夢中だった。俺は凛の傍までゆっくりと歩いて行き、忙しく動く右腕を掴んだ。平古場は俺も殺しに来そうな目で睨んだ。
「やー男だろ?」
「関係ねぇだろ」
「ある」
「…わぁは女になりてぇ」
「でもやーは男だばぁ」
平古場は押し黙った。俺はそれがとてもいたたまれなかった。
「凛は…男でもちゅらさんさぁ」
「しんけん?」
「でーじちゅらさんだばぁ。もうやめろ」
すると平古場は口紅のついた唇を俺に押し付けてきた。それを理解する前にぬるりと舌が侵入してくる。
「…はっ」
息継ぎをするように唇を離すと、平古場はにやりと笑って
「口紅ついた」
と俺の口元を指差した。
「知念、かなさん、かなさんよぉ」
平古場は甘えるように擦り寄ってきた。こんな平古場は今まで見たことがなかった。