散文

□面倒事
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ここは平古場の部屋だ。
平古場はベッドで漫画を読み、俺は机で本を読んでいる。
俺の手にある「死のロングウォーク」はスティーヴン・キングの中でも残虐さが際立った作品で、平古場の家に来る度に読んでいる。

理由はよくわからないが、そういう気分になるのだから仕方がない。
だから俺は、この本は平古場の部屋に置きっぱなしにしている(そのせいでまた来なければと思ってしまうのも事実なのだが)。

「えー知念、知ってる?」

平古場が声を掛けてきたのは、本当に何でもないときだった。

「ぬーが?」

返事をするものの、紙の擦れる音はお互い止むことはなかった。

「いなぐは股から血流すんだってよ、うかさんさー」「…うっぴーねぇ」

実際は何一つ可笑しくなんかないけれど。

「だからなー、あんまさいさー」
「ちむいさー、やぁと話すとふりむんになる」
「はは、しぃてる」
「やぁだろ」

平古場はパタンと本を閉じた。

「くぬふんでー」
「ぬーが、わちゃくるな」「ひんぎるなよ」
「ふらー、死ね」

パタン。
今度は俺の本が閉じられた。

「やーはでーじたんちゃーだばぁ」
「そうかよ」

平古場はたまに面倒臭い。
いや、よく、かもしれない。
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