散文

□色の閉鎖空間
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季節は夏。
触れ合う肌がどうしようもなく熱くて、俺は千歳の腕を払おうとした。
しかし千歳は退こうとはせず、意地とばかりに絡みついてきた。何かを伝えようと思ったけれど、一体何を伝えようと思ったのかを忘れたから、俺は仕方なくこの体勢に甘んじることにした。
千歳の部屋で抱き合うように寝そべる俺と千歳。何コレだなんて考えるだけ無駄だと悟ったのはいつだっただろう、千歳は俺を放そうとはしない。

「ユウジくん」
「…何」
「呼んだだけ」
「あ、そ」

千歳の部屋は気が狂いそうな程に騒がしい色をしていた。壁は全部ショッキングピンクだし、天井は蛍光緑をしている。棚という棚はまっ黄色に染められ、机や椅子はオレンジだった。ベッドは赤で、濃い青色の小物がそこら中に散らばっていた。机の上にはカラフルな輸入品のお菓子が散らばっていて、とても体に悪そうだ。きっと白石がこの部屋に入ったら吐くだろう。あいつは潔癖だから。
千歳に、よくこんな部屋にいるな、と言ったら、気付いたらこうなっていた、と笑った。
部屋を見渡すと、壁という壁に貼られたモナ・リザのポスターが一斉にこちらを見ていた。あの絵は、どこにいても視線を感じるから、少し怖かった。
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