散文

□染み広がる傷に
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「知念」

そう呟く自分の声に、友情以上の感情が混じっていると気付いたのは、いつだっただろうか。
自分は知念にひどく依存している。それがわかる。

「何」

知念はそれに気付いているのかいないのか、無愛想に返事をした。
怒っているわけではない。大体いつもテンションが低いのだ。

『平古場と知念ってタイプが全然違うのにいつも一緒にいるよね』

誰かにそう言われた。
タイプは違うかも知れない。けれど、俺達はよく似ていた。

短気なところや人に執着しないところ、キチガイなところ。

違いは人目を気にするかしないか。それくらいだ。
嘘と建前に塗りたくられた俺の笑顔に気付いたのは知念だけだったし、それでも気にせず自分を飾らない知念は、俺にとって崇高な存在となった。

「知念、でーじ好き」
「そう」

人に執着しない俺が初めて依存した人間。
知念は俺のことどう思ってる?
そう聞いたら知念は

「別に」

と答えた。

「知念、何考えてる?」
「いなぐ。向こうにいる」

知念は向こう側にいる女子生徒を指差した。可愛いと有名な子だ。

「あにひゃーが死んだら、たーが泣くかな」

知念はニヤリと笑った。やはりどこかおかしいようだ。
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