散文

□好きだから嫌い
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平古場は知念が嫌いだった。
背が高いのも表情がないのも、それでいて妙な存在感があるのも気に入らなかった。

あるとき平古場は一人教室に残る知念を見つけた。
夕日の差し込む教室にただ一人知念はぽつりと座っていて、その様子は酷く奇妙でまた恐ろしくもあった。
平古場はゆっくり知念に近づくと、前の席に後ろ向きに座った。向かい合う形になった平古場は、そのとき初めて知念が何をしているのかを確認した。
知念はノートを一枚千切ると、それをピンセットでさらに細かく引き裂いていた。まるで平古場などいないかのように黙々と引き裂き続けた。
平古場が知念を睨んでみても、知念はノートの切れはしを見つめやはり引き裂いていた。そのノートには何も書かれていなかった。

「これ、ぬーの儀式?」
「別に、やりたいだけさ」

平古場が口を開けば、当然のように返答をした。ただそれ以上は何も言わず、手を休めることなく引き裂いた。ビリビリという音だけがやたら耳について、平古場にはそれがやけに狂気じみて感じられた
いくら睨んでも、知念は全く気にしていないようだった。

「やめろ、知念」
「ぬーがよ」

知念はギョロリを平古場を見た。平古場はその目がとても嫌いだった。
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