平凡アワー
□平凡アワー その8
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「源三〜暇だ〜、どっか行こうぜ〜。」
「ごめん!今から図書委員なんだ。じゃあ行ってきまーす!」
そう言うと源三は慌てて部屋を出て行った。
何が楽しくて夏休みに委員会なんて…俺には絶対無理。
源三もだけど委員長も何かの仕事があるとかであんまり会えないし、蒼井も最近忙しいと思ったらタマの予防接種やらトリミングやらがあったそうだ。
道理でタマが「俺、綺麗になっただろ?」的な、妙に誇らしげな顔してたわけだ。
生徒会の面々もやはり仕事があるそうで…
数少ない友達でさえなかなか遊べず、俺の不満は溜まるばかりだ。
ひとりやることの無い俺はぼんやりと寮を歩いていた。
殆どの生徒は帰省したのだろう、寮の中はがらんとしていて余計に寂しさを感じる。
ミーンミーン
「ミーンミーンじゃねぇよ!日本語で話せっての…はぁ。」
俺のつっこみも効果が無く、セミの鳴き声だけがいつまでも虚しく響いていた。
そろそろ戻ろうかと思った時、自販機の辺りに人を見つけた。
「ねぇねぇ、今度のデートどこ行く?」
「そうだなぁ、遊園地とか?」
「もう飽きちゃったよ〜。」
俺みたいな暇人かと思ったらどうやらカップルのようだ。
「じゃあさ、祭りとかどう?日曜日に隣町であるらしいぜ。」
「冗談でしょ?庶民的な祭りなんて有り得ないし〜。」
そんな会話をしながら二人は俺の横を通り過ぎて行った。
…今あいつら何て言ってた?祭りとか言ったよな。
祭り、祭り、祭り!あぁ何て素晴らしい響き!夏と言えば祭りじゃん!
いいこと聞いた…日曜日か。絶対行くぞー!
ようやく俺の夏休みが動き出した瞬間だった。