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□君を思う
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桜の花びらがはらはらと舞い散る中。君はとても儚げで、後ろからきつく抱きしめたい衝動にかられる。

君は今何を思っているのだろう。桜ばかりに目を向ける薫に少し焼きもちをやく。
情けない。
そうは思いつつも、その独占欲は絶えるところをしらない。
「薫殿」
剣心は薫のリボンに手をかける。
「花びらが付いているでござるよ。」
いきなり近づいた剣心に驚き、顔を赤くする。
「ありがとう」
赤い顔のまま微笑むその姿は、桜の淡い色にはえ、少女をさらに綺麗に見せた。
「綺麗でござるな」
剣心は薫の手を握った。
「ええ、とても綺麗ね。今日来れて良かったわ」
花びらに手を伸ばし、掴もうとするが、なかなか少女の手には収まってくれない。
「もちろん、桜も綺麗でござるが」
剣心はそこで一旦言葉を止め、少女が掴もうとするそれをふわりと掴み、薫の手にのせ、微笑んだ。
「薫殿の方が綺麗でござるよ」
男からの予想外の言葉に、礼を言うのも忘れ、少女は恥ずかしさから頬を染めてうつむいた。
「ずるいわ」
少女はまだ赤い顔を上げ、少し睨みがちに剣心をみた。
「何がでござるか」
剣心はなおも少女の頬をなでつつ聞いた。
「だって私ばっかりドキドキしてるのよ?不公平だわ」
薫はふいと顔を背けた。
そんな顔で怒っても可愛いだけだ。
少女を慈しむように見て、剣心はゆっくり口を開いた。
「そうしたら、薫殿も十分ずるいでござるよ」
「何でよ」
顔を上げた薫の頭をなでつつ、剣心はもう片方の手で少女の桜色をした唇をなぞる。
「拙者もいつも薫殿にドキドキしている。だからおあいこでござる」
剣心はそう言うと、唇をなぞっていた手を頬に滑らせ、そこへ自身の口をよせた。
二人の影が重なる。

「これもおあいこ?」
少女が首を傾げる。
「そうでござる」

一面の桃色を背景に、また一つ影が重なった。


END

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