遙葉書
□雨のち幸
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「弁慶…もしかして、俺が洗濯の事ばっか気にしてるの、怒ってるの?」
弁慶の肩がピクリと揺れ動いて、うやっぱそうなんだ、と景時は納得した。
そして、弁慶をそっと引き寄せると、腕の中に抱きこんだ。
「…ごめんね。せっかく久し振りに2人っきりで会えたのに。俺…無神経だった」
「…ほんとにね」
弁慶が照れ隠しにツンと答えると、景時は苦笑して弁慶の耳を甘噛みした。
「ん…ッ …僕まだ怒ってるんですからね…」
「いいよ、怒ってても。怒ってる弁慶も綺麗で好きだから」
「…な…っ////」
一気に赤面する弁慶に、景時はにっこりと微笑むと、可愛い、と呟いて更に強く、それでいてまるで割れ物を扱うかの如く優しく、弁慶を抱き締めた。
暫くそうしているうちに、だんだん雨音が弱くなり、激しかった雨が霧雨へと変化した。
雲間から太陽の光が垣間見え、庭の一点を穏やかに照らすと…
「…あ!」
景時が突然声をあげた。
瞳を閉じて、心地良い温もりにうつらうつらと淡い転寝をしかけていた弁慶は、その声に何事かと目を開けた。