遙葉書
□相換恋慕
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不意に鳥のさえずりが耳に届き、涼やかな早朝の日光が眼下を眩しく照らす。
几帳に衣擦れの音を響かせながらヒノエは徐に体を起こした。
昨夜同じ褥の中で一夜を共にした叔父の姿は既に見当たらない。
「弁慶、先戻ったんかな…ま、こんなトコ誰かに見られちゃ大変だからな…ふぁ…あ」
寝ぼけ眼のまま欠伸をし、ふと手に触れる何かに気が付くまで、数秒掛かった。
「ん…」
のろのろと隣を伺うと、見覚えのある少年が徐に体を起こしてヒノエを見つめた。
紅い髪に、額に見える八葉の証…
「何だ…弁慶じゃなくて、俺じゃん」
「ふぁ…ヒノエじゃないと思ったら、僕でしたか…」
『…―――――ん?』
次の瞬間、屋敷中に天地を揺すり起こすかの様な叫声が響き渡った…