遙葉書
□京ニ花咲クハ恋哉
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望美の世界に来てから数ヶ月があっという間に過ぎた。
今はこの生活にも慣れてきたせいか、この世界の住人として十分自活して行くだけの力はある。
弁慶は望美から貰った携帯をジャケットの胸ポケットに仕舞い込み、身支度を整えて有川家のリビングに下りて行った。
「すみません、遅くなりました」
「あ、弁慶さん!私も今着いたばっかりだから全然平気だよっ」
弁慶の姿を認めると、ソファーにちゃっかりと座っていた望美は屈託の無い笑顔でニッコリと答えた。
「姫君は優しいよなぁ〜 俺なんか一時間も前から此処に立ってるぜ」
「…甥っ子の分際で可愛くないですね(ニッコリ)」
「弁慶…怖いからその笑顔止めてくれ…」
「問題ない」
「いや〜先生…そこ問題アリかなとか思うんだけどな〜」
「兄上、うるさい」
「…私は一時間半前に」
「敦盛…なんかお前暗い」
「ストップ、譲…その台詞タブー」
「“たぶぅ”とは何、神子?」
「ブタってことだょ☆」
「…違ぇ」
「まぁ〜良いじゃん!今日から楽しい旅行なんだから細かい事気にしない気にしない!」
そう、今日から神子2人、八葉、そして白龍の一行は二週間の京都旅行に出掛ける予定なのである。
折角だから皆で京都に花見に行こうと言う望美の鶴の一声で決まった旅行である。
リビング中に敷き詰められたボストンバッグやスーツケースの合間を縫って、望美が弁慶の元へ駆け寄ってきた。
「うん、今日もお美しい♪…って事でぇ、よっし!!こーれーで、全員揃ったし、電車の時間もちょうどだから行くか!」
やけにハシャぎまくる神子を先頭に一行は重い荷物を引き摺って、桜が芽吹き始めた春の麗らかな陽射しの中、有川家を後にした。