遙葉書

□繋想
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一ノ谷の合戦で、平家を背後から攻め、見事凱をあげた源氏軍。

「あの急勾配を馬で駆け下りた時の何とも言えない高揚感は忘れられんな」

「フフ…っ 最初は無茶だと思いましたが、あの時の九郎の機転が無ければ、我々源氏軍の勝利は見えませんでした」

九郎の得意気な様子に、弁慶は微笑みながら頷いた。
その柔らかな笑顔を見て、九郎は照れた様に顔を背けた。

俺は弁慶の優しい笑顔が好きだ
けど、そんな顔されたら、成り立つ会話も成り立たんじゃないか…

そっぽを向いた九郎に対して、弁慶は微笑みを絶やさぬまま机に広げられた地図を見た。

「九郎、勝利の余韻に浸るのも良いですけど、平家は滅びた訳じゃないですからね。次の作戦をたてなければ…」

その言葉に、ハッと我に返った九郎は、幸せに浸りかけている自分を奮い立たせて真顔に戻った。

「あぁ、そうだったな。
…平氏軍は一旦屋島へ逃げているだろう。だとすると、次の合戦はそこになるだろうな」

「…恐らくそうなるでしょうね。でも九郎、我々源氏軍は頼れる水軍を持っていません…それに対して平家の勢力は瀬戸内海一帯を占めています。
圧倒的に不利なのは、明白ですね…」

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