短編夢
□Infection
1ページ/3ページ
(おかしい…。)
私は、目の前にいる彼の異変に気付き、首をゆっくりと傾げた。
今、私は彼の家で一緒に夕食を食べている。
しかし、彼は私の作った料理に口をほとんど付けないまま箸をそっと置いた。
それだけなら、別に異変と呼ぶ程の事ではない。
何故なら元々、彼は食が細い方だし、私の手料理に対して無反応なのは、いつもの事だからだ。
付き合ったばかりの頃は、自分の料理が彼の口に合わないのかと思い、恐る恐る「おいしくなかった?」と、尋ねた事もあった。
だが、その時彼から「ここ2週間、塩と焼酎しか胃に入れてなかったからな…。こんなしっかりしたメシ食ったの久しぶり。」と言われ、それからというもの手料理を多量に残されても、不安を感じる事は全く無くなった。
たぶん、私はぼんやりと理解したのだ。
自分が今付き合っている相手は、きっと光合成でもしながら生きているのだろう、と。
そんな特殊な相手に、恋人の手料理を全部平らげて、うまかったよ等の感想をくれる…そんな普通の男がするリアクションを求めてはならない。
しかし。
(あの衛士が、注いである焼酎に口を付けないなんて…!そういえば、さっきから煙草も吸ってない…。)
衛士にとっては貴重な栄養源ともいえる焼酎を口にしない、
ヘビースモーカーなのに煙草を吸わない、
…これは、異変だ。