惨躱し編
□惨躱し編 其の壱:イレギュラー
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気が付くと、両親の葬式の真っ最中だった。
どうやら、今度の世界はたっぷりと時間があるみたいね。
・・・親の葬式でこんな事を考えてしまう、私はやっぱり異常なのかしら。
まぁいいわ。
今度こそ、死の運命から抜け出してみせるんだから。
・・・とりあえず、恒例の質問をしておきましょう。
「羽入、今は“いつ”?」
「あぅあぅ、昭和56年の七月三日なのです。」
・・・隣から声がした。
私はそちらへ視線を向ける。
羽入がいた。
お坊さんがお経を読んでいて、私は座布団に正座している。
隣で羽入も正座をしていた。
・・・違和感。
いつもの羽入は軽く透けているのに、この羽入は思いっきり実体があった。
私は試しに羽入の頬をつねってみる。
「い、いひゃいのでふよ!梨花ぁ〜!」
羽入がわめく。
いままでは見る事や話す事はできても、触る事だけは決してできなかったのに。
私は羽入を掴んで引きずりながら外へ出て行った。