「ほらお父さん、早く起きて!」

黒髪の少女はケイタの体を揺する。

「嫌だ。後2時間は寝る…」

ケイタは寝惚けながら彼女に言った。

「お父さんが朝ごはん食べてくれないと食器が片付かない…ってお母さんが怒ってたよ?」

「…マジでか」

彼女…自分の娘の言葉に、ケイタは危機感を覚えた。


「おはようケイタ。
…今何時だか分かる?」


寝室のドアの向こうから、冷やかな声が聞こえた。

「ア、ミ…」

寝室に入ってきたアミはケイタを睨みつけた。


「今何時?」

10時だよ、とケイタに娘が囁いた。

「……10時、か?」

「へぇ…分かっててこんな時間まで寝てるんだ?」

どんどんアミの顔が険しくなっていく。

「お父さん。今日は午後から皆で出掛ける約束したの…覚えてる?」

そこに娘が追い討ちをかける。


「…寝坊してすいませんでした」


ベッドから出たケイタは、妻と娘に頭を下げるしかなかった。

「分かったなら良いよ。
 早く朝食食べちゃって」


ケイタに謝られて気が済んだのか、アミは小さく笑った。

「お父さん、朝ごはん食べ終わったら出掛ける準備してね!」

そう言うと、二人の娘は寝室から出ていった。



「あのさ…」


ピンポーン

インターホンの音が聞こえた。

「あ、はーいっ!
…ケイタ、早く支度してね」

娘に続いてアミも寝室を出ていった。

「…とりあえず着替えるか」

ケイタは独り言を呟いてから、パジャマを脱ぎ捨てた。

そして、枕元に置いてあった服に手を伸ばした。

「(アミって意外に気がきくよな…)」



「ケイターっ。サラ達もう来たから急いでー!」

玄関の方からアミの声が聞こえた。

「今行く!」

着替えを済ませたケイタは寝室を後にした。






「あれ、アミとアオイは?」

ケイタがリビングにいくと、サラとチサとシオリ(サラとアオイの子供)とケイタとアミの娘がいた。

「アミおばさんと父さんならキッチンで弁当作ってるよー」

「ウワキじゃないから大丈夫でーす」

チサとシオリが続けて言った。


「なっ…!」

二人の言葉にケイタの顔は赤くなる。

「コラ。チサ、シオリ。
 ケイタなんてからかっても仕方ないだろ」

とサラ。


「ケイタ?そっちにいるなら早く朝食食べてよ!」

キッチンからアミの声が聞こえた。

「お父さん、早く食べて?」

ケイタとアミの娘は、テーブルの上に置いてある朝食を指差して言った。

「…そうだな」

「ケイタも自分の娘には甘いんだな」

ケイタが朝食に手を伸ばそうとした途端、サラがそう言った。

「はぁ!?」

「ケイタ、早くして!!!」


ケイタはサラに反論しようとしたが、アミに急かされたので朝食を食べはじめた。


「(…ついでに、アミにはもっと弱いよな)」







もしも桂太と阿実が結ばれていたなら。



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