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□nostalgia memory-3
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バレンタイン前日。
四人で遊んだ後、帰り道の途中の話。
「はい、コレ」
阿実は突然立ち止まり、鞄の中からシンプルにラッピングされた袋を取り出した。
「ちょっと早いけど…バレンタインだからね」
そう言って、阿実は三人に袋を渡す。
「ありがとうございます」
桂太も蒼紫も毎年阿実からチョコを貰っているので、反応はそれほど大きくない。
「…で、紗良のはこれね」
そう言って阿実が鞄から出したのは、桂太と蒼紫に渡した物より大きく、明らかにラッピングに手が込んだチョコだった。
「…え?あ、ありがとな」
「・・・・」
「…何かさ、俺らのよりデカイな」
「ラッピングも手が込んでますね」
反応が薄い割に、二人は軽くショックを受けた。
「義理チョコより友チョコで張り切るのはフツーでしょ」
「それかさぁ…いらないなら返してくれていいけど?」
「…………」
紗良は呆れた、というより哀れむ様に二人を見ている。
「イエ、要リマス…」
「桂太は?」
そう言いながらも、手は桂太に向かって差し出されている。
「欲しい…デス…」
「…宜しい」
とりあえず、二人は胸を撫で降ろした。
「なぁ阿実、さっそく食っていーか?」
さりげなく紗良が話題を変える。
「いいよ。ついでに感想聞かせてくれればね」
「俺が言う間でもなく美味いだろ」
「いーの。あげた人から直接聞きたいし」
その時。
紗良、桂太、蒼紫の頭に翼の姿が浮かんだが、誰も口には出さなかった。
「ねぇ、どう?」
「…美味い」
紗良がそう言うと、阿実は嬉しそうに笑った。
「…紗良のセリフさぁ、毎年同じじゃね?」
「別にいーよ?感想マトモに言わない誰かさんよりはね」
「阿実さん」
蒼紫が阿実に話しかける。
「何?」
「このカードに書いてあることは、どんな意味なのですか?」
【Buon festa di san valentino
Con affetto
Ami】
「ブオン、フェスタ ディ サン バレンティノ…?」
自分が貰ったカードを見ながら、ローマ字読みで文章を読みあげる。
「"バレンタインおめでとう"って意味だよ。
英語だと"Happy valentine"みたいな感じ」
「へー…」
「またイタリア語ですか?」
蒼紫が訊く。
「まーね」
「阿実ってイタリア好きだよなー」
「もちろん。…ちなみに、イタリアはホワイトデーの習慣ないからお返し期待してるね」
桂太の前を冷たい北風が通り過ぎ、桂太の手からカードが落ちた。
落ちたカードはひっくり返っていて、裏側にも文字が書いてあることが分かった。
【ホワイトデーは倍返し。
…というか三倍返しね】
「紗良、蒼紫…お前らのカード見せてもらっていーか?」
自分のカードを拾って、桂太が言う。
二人のカードには…
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