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□nostalgia memory
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これは、四人が中2の頃の話し。


桂太はカメラを抱えて、笑いを堪えるのに必死だった。

「…なあ桂太」

そんな桂太を見て紗良が訊く。

「なんだ?」


「なんで俺がセーラー服着る必要があるんだよ」


桂太が笑いそうになっているもの…それは、セーラー服を着た紗良だった。

ちなみにそのセーラー服は阿実の物で、阿実は紗良の学ランに着替え中である。

蒼紫は阿実の着替えを覗く輩が居ないか周囲を見張っていた。
まあ、視力は悪いから意味はないが。


何故二人が制服を交換したのか。


それは桂太の発言に原因がある。

「紗良、お前…中学の三年間ずっと学ラン着んのか?」

「ああ。そのつもりだ」

桂太の質問に紗良は素っ気なく答えた。

「でも一回くらいセーラー服着てよくね?
なあ阿実、蒼紫」

「…何故私に振るのですか?」

「別にいいんじゃない?
紗良の自由だし」

桂太は二人に話しを振ったが、軽くあしらわれた。


「お前らさぁ…紗良がセーラー服着るとどんなんか気にならねーか?」

「え?」

「んで、ついでに阿実は学ラン着ればいーだろ」


そして、今に至る。



「お待たせー」

学ランに着替えた阿実が戻ってきた。


「お、案外似合ってんな」

と紗良。

「そう?紗良もかわいーね」

…ここだけ見るとただのバカップルにしか見えないのはきっと気のせいだ。

「では、折角ですし写真でも撮りましょうか」

この時…蒼紫が悪魔に見えた、と後に紗良は語る。

「二人共並べー」

桂太がカメラを構える。

「ほら紗良、笑おうよ」

紗良の横に立ち、阿実は笑顔で言う。

紗良はカメラに映らないように僅かに横に動いた。

「あ、紗良もっとこっち寄って!」

紗良がカメラに映らない位置にいることに気づいた阿実は、紗良の腕を掴む。

「ちょ、腕掴むな…っ」

「ん?なら手繋ぐ?」

阿実は自分の腕を紗良の腕に絡ませ、しかも手まで握った。

紗良に逃げる手段はもうない。

「ほら撮るぞー?」

紗良は最後の抵抗として、シャッターが押される直前に横を向いた。

パシャ

「あ」

シャッターを押してから、桂太が呟く。

「え…何、どうしたの?」

阿実が桂太に訊く。


「紗良さん…カメラの方を向いていませんでしたね」

桂太の代わりに蒼紫が答える。

「俺、撮っていいなんて一言も言ってねーからな」

桂太はガックリと肩を落とした。
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