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□wish of death
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彼は彼女の首筋に噛みつき、血を飲み始める。

その途端、彼の脳内に映像が流れ込んできた。
だが、その映像が何なのか彼には分からない。

「…っ!!!」

彼の脳内では目まぐるしい早さで映像が流れていく。
彼は苦痛を堪える様に彼女の首筋に強く噛みついた。
それでも彼女は首筋の痛みに顔をしかめず、薄く笑みを浮かべていた。

「!!?」

彼の脳内に流れ込む映像の中に、彼や二人の共通の友人達の姿があった。
しかも、どの映像も彼の記憶にあるものばかりだ。

漸く彼は頭に流れ込んでくる映像が何なのか理解した。

でもそれは、彼にとって理解したくないことだった。

「ごめんね」

彼女が小さく言う。

「何、で?
ボクは君の魂まで吸ってないのに…」

「私が仕組んだの。
貴方が私の血を吸った時に、私の魂も一緒に吸われる様に…ね」

彼女の言葉を聞き、彼の顔から血の気が引いていった。

「私の記憶なんて押しつけちゃってごめんね」

彼女は小さな声で呟いた。


「そうまでして、君は死にたいのかい?」


彼の質問に彼女が答えることはなかった。

何故なら…彼の腕の中で彼女は冷たくなっていたのだから。




wish of death

死の願い。

(死なせてくれてありがとう)
(何故君はそんなに死を望むのだろうか)



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