弟の囁き

□Venus's Serenade
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「何だこれ?」





日が傾きはじめ、そろそろ野営の準備の分担を皆で話し合っている中、突然ロイドが声を上げた。


彼の手には何とも形容しがたい不思議な形をした謎の物体がちょこんと乗っている。




「こんな生き物見たことねぇぞ?」

「…ロイド、今は…」

「あ!」




ロイドの場を無視した発言をリフィルが注意しようとしたが、その声は桃色の帯を揺らしながらロイドに駆け寄る少女の声によってかき消された。




「しいな知ってるのか?」

「あぁ、これは生き物じゃなくて式神だよ」

「…シキガミ……?」

「まぁ見てなよ」




しいな、と呼ばれた少女は式神と呼んだモノを自らの手のひらに乗せる、すると式神はあっという間に一枚の書簡へと姿を変えた。




「おぉ──!」

「うわぁ〜すごいねぇ〜♪」

「ミズホの里に伝わる術の一つなんだよ」

「そういえば前にレアバードにも付けてたってタイガさん言ってたよね」

「そうさ、ミズホではよく使われる…まぁ基本的な術…ってところだねぇ」




彼女は簡単に式神の説明をしながら書簡を開き、内容を確認する。




「私もやってみたいなぁ〜」

「俺も!俺もやってみたい!」

「コレットならともかく……ロイドには無理じゃない?」




年少組が式神の話題に花を咲かせている中、書簡の内容を確認し終わったしいなは仲間達の顔を見回し




「里に行かないかい?」




と、言った。








あまりにも唐突なしいなの言葉に、全員が目をぱちくりとさせる事しか出来なかった。












Vinus's Serenade











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